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Princess of Moonburg(DQ2) 1-2



ハーゴンの目が赤く輝き、何事かをつぶやく。
その瞬間、私の周りには竜巻のような風が巻き起こり、私の着ている服を引き裂いた。
「きゃぁっ!」
私は躰を押さえて床に座り込んでしまう。
たいしたダメージは受けなかったものの、お気に入りの赤いフードもピンクのローブもずたずたに切り裂かれ、私はほとんど裸のような状態にされてしまったのだ。
「クククク・・・仕方のない娘だ。それではお前の気が変わるのをじっくりと待つとしよう。クククク・・・」
「こ、こんなことをしても私の気持ちは変わりません! むしろあなたへの憎しみが増すだけです」
私は精いっぱいの勇気を振り絞る。
イオナズンをぶつけてやろうと思い、私は呪文を思い浮かべた。
「ククククク・・・また来るとしよう」
すると、どうしたわけか、ハーゴンは闇の中へ消えて行く。
「ま、待ちなさい!」
私はイオナズンをぶつけるタイミングを逸してしまい、ハーゴンが消え去った闇の奥に目を凝らす。
「ムーンブルクの王女ナナよ。着る物がなくては困るであろう。ベッドの脇にある宝箱を開けるがよい」
闇の奥から声が響く。
私はただそれを黙って聞くだけだった。

「ふう・・・」
ハーゴンの気配がなくなってしまったことで、私は思わず息を付いた。
怖かった・・・
あれが邪神官ハーゴン。
恐るべき魔物の統率者。
はたして勇者様はハーゴンに勝てるのかしら・・・
ううん・・・
そんなこと考えちゃだめ。
勇者様は強いんだもの。
絶対にハーゴンなんかに負けるはずはないわ。

ひんやりした空気が私の肌を撫でて行く。
寒い・・・
先ほどのハーゴンのカマイタチで私はほとんど裸にされてしまっていた。
ローブの下に着ていた下着すら切り裂かれてしまったのだ。
それでも私自身にはほとんど傷はなく、かすり傷程度のものはベホイミで完全に消えていた。
でも・・・
このまま裸でいるわけには行かないわ。
リレミトで脱出しようにも、裸のままじゃどうしようもない。
そういえばハーゴンは宝箱を開けてみろといっていたわ。
私はハーゴンの言葉を思い出し、ベッドの脇を探してみた。
すると、大き目の宝箱が置いてあることにすぐに気がつく。
これがきっとそうなんだわ。

鍵は閉まっているのかしら・・・
私はそっとふたを開ける。
宝箱は鍵がかかっている様子はなく、簡単にふたが開いた。
「これは?」
宝箱を覗き込んだ私の前に、折りたたまれた白いローブと黒いマント、それに角のついた黒いフードが現れる。
「な、なにこれ・・・」
見るからに禍々しい感じを抱かせるそれらのほかに、黒い手袋やひざぐらいまでのブーツ、それに黒いストッキングまで入っている。
極めつけは先がとげとげの付いた球体になっている杖が二本入っていて、赤い一つ目のような模様と口のような黒い横筋が入った白いマスクがおいてある。
私はハッとした。
この白いローブを纏い、黒いマントを付けてこのマスクをはめたモンスターを私は知っている。
そう・・・
私が“いかずちのつえ”を手に入れることができたあの戦い。
その相手がこの格好をしていたわ。
確か・・・あくましんかん・・・

私は宝箱のふたを閉じた。
いくらなんでもこれはひどい。
着る物がないからって、あくましんかんの格好をするなんてありえない。
ハーゴンの嫌がらせだわ。
きっと、私にあくましんかんの格好をさせて、勇者様と会わせるつもりなんだ。
勇者様と同士討ちをさせるつもりなんだわ。
その手には乗るもんですか。
勇者様はきっとすぐに私だと気が付いてくれるわ。
トンヌラは・・・気がつかないかもしれないけど・・・
でも、勇者様はきっと私に気が付いてくれる。
だからといってこんなものを着る気になんかなれない。
バカにしないで!
絶対に着るもんですか!




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