7話 風車?炸裂??

拷問部屋では、スカーレットが木馬に乗せられていた。
カレンがスカーレットに聞く。
「木馬の乗り心地はどう?そろそろ知ってる事、全部喋ったら?」
スカーレットは黙ったまま痛みに耐えている。
「私も一緒に木馬に乗ろうかな」
カレンは悪戯っぽく笑うとスカーレットの背後に回り込み木馬に跨がると、スカーレットの背中に膝を押し当て体重をかけた。
「ううぅ…ううぅ…」
              
スカーレットが苦しそうにうめき声を上げる。
カレンが甘く囁く。
「全部喋って楽になりなよ」
スカーレットが答える。
「言わない…言わ…ない…」
「何て強情な女なの!」
カッとなったカレンは、スカーレットの背中を思い切り蹴って、馬の背を勢いよく滑らせた。
「ひぃぎゃあああ」
スカーレットが大きな悲鳴を上げる。
カレンはスカーレットを木馬から強引に引きずり下ろした。そして拷問台に大の字に縛り付けると、大きなガラスの箱を被せた。
天井の小窓を開けて、カレンが言う。
「お前の強情な姿は見飽きたよ。もう何も聞かない。死んでもらう」
カレンは木の箱を持って来て、小窓から無数の黒い塊を流し込んだ。それは鼠であった。
鼠達は、初めガラス箱の中を勢いよく走っていたが、スカーレットという獲物を発見すると、一斉に食いつき始めた。
カレンが言う。
「一週間も餌を与えていないこの鼠達にとって、お前は最高のご馳走に見えるだろうよ。私はお前が骨になるのをゆっくり見物させてもらうよ」
鼠達がスカーレットの胸に腹に太股に食いつく。
「ギィヤアアアアア」
                 
スカーレットは悲鳴を上げながら、体を激しく揺すって追い払おうとするが、食いついた鼠達は離れようとしない。血だらけになりながら、体をばたつかせるスカーレットであったが、恐怖と絶望でとうとう失神してしまう。
カレンがつぶやく。
「あらあら、抵抗しないとすぐに骨になっちゃうわよ」
その時、バタンと拷問部屋のドアが勢いよく開いて、ドリー軍曹が飛び込んで来た。
ドリー軍曹は、スカーレットの姿を発見すると、ガラス箱に走り寄り、2、3発パンチを浴びせる。
しかし、分厚いガラスはびくともしない。カレンは椅子に座り、その様子を興味深そうに見ている。
   
ドリー軍曹は5、6歩後退してガラス箱から距離を取り、叫び声を上げた。
「はいやああー!」
ガラス箱に突進し、頭突きを食らわす。一発!もう一発!
ガシャアアアーン!
ガラス箱は粉々に砕け散った。
ドリー軍曹は拷問台に飛び乗ると、スカーレットの体に食いついている鼠を全部追い払い、拘束を解いた。
額から滴り落ちる血を拭おうともせず、カレンの方を向いてドリー軍曹が言った。
「待たせたな」
カレンが静かに聞く。
「名前を…聞いておこうか」
ドリー軍曹が答える。
「ただのお節介だ。さあ来い!」
カレンは立ち上がり、警棒を持って構えた。
ドリー軍曹がカレンに近づいて手首を掴もうとする。最初から風車狙いだ。
「韓信流…」
カレンが警棒でビシッと腕を叩く。手を引っ込めるドリー軍曹。
またも近づき手首を掴もうとするドリー軍曹。
「韓信流痴漢撃退術…」
カレンの警棒が脇腹をえぐりよろけるドリー軍曹。
カレンが警棒でドリー軍曹の喉を突く。
「ふご…ふご…」
息ができず苦しがるドリー軍曹。
それでも諦めず近づこうとするドリー軍曹の肩に、カレンが警棒を思い切り振り下ろす。
グシャアア!
警棒が折れ曲がった。ギョッとし動きが止まったカレンの手首を掴んだドリー軍曹が叫びながら風車を放つ。
「韓信流痴漢撃退術風車!」
       
それは、風車とは似ても似つかない、崩れた一本背負いであった。しかし、もうそんな事はどうでもよかった。
ドリー軍曹の渾身の風車によって、カレンとドリー軍曹は共に前頭部を床に強打し失神した。


※この物語はすべてフィクションであり、登場人物および団体は実在しないものであります。

 

 

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