5話 古城の水車

ホテルの一室に沈み込んだ4人の姿があった。長い沈黙の後、ドリー軍曹が口を開いた。
「私達は、スカーレットとは何の関係もありません。他人が見たら、私達のやってる事は、ただのお節介に見えるでしょう。でも…そう思われたっていいじゃないですか。こうなったら、とことんお節介になってやろうじゃないですか!」
ケイがパチパチと手を叩く。
早紀が韓信に言う。
「ドリー軍曹、燃えてるね」
    
韓信が答える。
「そうだね」
ドリー軍曹が早紀を見て言った。
「早紀ちゃん、私に風車を教えて下さい。私は強くなりたいんです!」
早紀はちょっと驚いて答えた。
「えっ?別にいいけど」

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近くの公園で、ドリー軍曹の特訓が始まった。
ドリー軍曹「まずは技のタイミングを覚えなければいけません。早紀ちゃん、私にどんどん風車をかけて下さい」
早紀「それでは行きますよ」
早紀がドリー軍曹の手首を掴んで回転する。
「うぎゃあああ」
ドリー軍曹が手首を押さえて転げ回る。
早紀「大丈夫ですか?」
ドリー軍曹「もう一丁」
早紀が回転する
「ぐおおおお」
早紀「もうやめときますか?」
ドリー軍曹「まだまだ、もう一丁」
早紀が回転する。
「うぎゃあああ」
ドリー軍曹は悲鳴を上げてバッタリ地面に倒れた。
倒れているドリー軍曹に早紀がつぶやいた。
「男は強くなければ、女を守れない…」
ドリー軍曹がふらりと立ち上がる。
「もう一丁!」
物陰から心配そうに様子を見ていたケイに韓信が言った。
「再度の侵入に向けて、あの城の情報を調べてほしい」
     
ケイ「わかりました!」
ケイは聞き込みのため、町に向かった。

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牢獄に入れられていたスカーレットが目を覚ます。
後ろ手に縛られているため、自由に身動きが取れない。
顔を上げて、天井の小さな格子窓をぼんやり見つめる。
(私はこのまま責め殺されるのだろうか…)
不安と絶望から、スカーレットの頬に一筋の涙が流れた。
その時、窓に涼風が留まった。スカーレットはハッとした。
(あっ!あの時の白いカラス)
涼風「クルゾ…」
スカーレットが聞く。
「えっ?誰が来るの?」
「ドリセミ…」
涼風はそう言い残すと、飛び去った。
      
その時、背後で鉄格子が開き、男の声がする。
「さあ拷問再開だ。さっさと出ろ」
後ろ手に縛られたスカーレットが兵士達に連行され、薄暗い廊下をとぼとぼと歩く。
(ドリセミって何だろう?)
ぼんやり考えながら歩いているスカーレットの尻に、ビシッと兵士の鞭が飛んだ。
「さっさと歩け!」

中庭の隅に小屋が立っている。
連行されたスカーレットが小屋に入ると、中にはカレンが待っていた。
「この建物は古城を改造した物だから、古めかしい道具が揃っている。これなんかもお前の拷問に使えそう」
カレンが指差すその先には古い水車がギィッギィッと嫌な音を立てて動いている。
     
兵士達が、スカーレットを水車の側面に大の字に縛り付ける。
「用意はいいかい?」
カレンが合図すると、ゆっくり水車が動き出した。スカーレットの頭が水の中に沈んでいく。
数秒すると水車が回転し、スカーレットが顔を出す。苦しそうに大きく息をしている。
一回転してまた頭が水に沈む。
何回転かした後、カレンが水車を止めて、スカーレットに聞く。
「そろそろ喋る?」
スカーレットは苦しそうに息をしながら、カレンを睨んでいる。
「まだのようね」
カレンが指示を出し、水車が動き始める。
スカーレットの頭が水に沈んた所で、カレンが警棒でスカーレットの腹を突いた。
ブクブク と水面に泡が上がり、スカーレットの体が苦しそうにくねり、大きな胸が上下に激しく揺れる。
スカーレットが水面から顔を出した。かなり水を飲んで苦しそうに咳込んでいる。
「ぐほっ、ごほっ、げほっ」
カレンがスカーレットの顎に手を掛け、ぐいっと顔を上げさせる。
「苦しいでしょう?白状しなさいよ」
「あなたに話す事などない!」
    
スカーレットが初めて強い意思を示した。
「あら?やけに強きになったわね。さては、お前を助けに来たという小者達の情報を知ったのかな?だめよ期待しても。奴ら、痛い目に会って二度とここに来ようなんて思わないから」
カレンが指示を出し、水車がまた回り出す。十数回転した後、カレンがスカーレットに聞く。
「喋る気になった?」
スカーレットが息をぜえぜえさせながら答える。
「話さ…な…い…」
カレンがスカーレットの乳房を警棒でビシッと叩きながら部下に叫ぶ。
「もういい!この女、拷問部屋に戻せ!」
水車から下ろされたスカーレットは、2人の兵士に引きずられるように小屋から出ていった。
 


※この物語はすべてフィクションであり、登場人物および団体は実在しないものであります。

 

 

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