4話 屈辱的な撤退

カレンが聞く。
「お前は何者だ?その女の仲間か?」
ドリー軍曹が答える。
「ただの観光客だ。この女が気に入った。もらっていく」
カレンが警棒を構えながら言う。
「お節介が過ぎると命を縮める事になるぞ」
ドリー軍曹が雨傘を構える。
「さあ来い!」
カレンが警棒を鋭く一振りすると、ドリー軍曹の雨傘が弾き飛ばされた。
「うおーっ!」
ドリー軍曹が大声を上げてカレンに突っ込む。
カレンはドリー軍曹の脇腹に警棒をのめり込ませる。ガクッと膝をつくドリー軍曹。
カレンが警棒でドリー軍曹の背中を乱打する。ドリー軍曹は床に倒れ込んだ。
必死に立ち上がろうとするドリー軍曹の左手にカレンは、ナイフを突き立てた。
「ぐおおぉぉ」
ドリー軍曹は低いうめき声を上げた。
「とどめだ!」
カレンが警棒を振り上げる。その瞬間、カレンの腹を刀がかすめた。
カレンは咄嗟に後ろに倒れ、これをかわした。
立ち上がりながら睨みつけるその先に、刀を抜いた早紀がいた。
    
早紀はカレンと視線を合わせたままゆっくりしゃがむと、ドリー軍曹の手に刺さっているナイフを引き抜き、引き起こした。
カレンが警報器のスイッチを入れ、建物中にサイレンが響き渡った。韓信が部屋に駆け込んで来た。
「兵隊達がここに押しかけて来るぞ!」
拷問部屋に兵隊達がどっと押し寄せて来る。
韓信は先頭の男を蹴り飛ばし後ろの5、6人を将棋倒しにするとドリー軍曹に言った。
「ここは退却しましょう!」
3人は倒れている兵士を踏み越えて、部屋の外に脱出した。
湖が見えるガラス張りの通路を走って逃げる3人。
前方からライフルを持った兵士達が押し寄せて来る。後方からも兵士達が来る。
囲まれたようだ。韓信は兵士達を見回しながら言った。
「降参です。撃たないでね」
韓信は刀を鞘に納め、両手を後ろに組んだ。その状態で、ケイにメールを打った。
兵士達を掻き分け、ザット大佐が姿を現した。
「鼠が3匹かかったようだな。お前達の目的は何だ?」
       
韓信が答える。
「目的なんかありません。私達はただの観光客です。道に迷ってこのお城に迷い込んでしまいました」
ザット大佐が言う。
「ふふ、どうせなら、もっとましな嘘をつけ」
そこにカレンが駆け付けて叫ぶ。
「そいつらの狙いは女の奪還です!」
ザット大佐「何だと?」

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プルルル…
待機していたケイに、韓信からのメールが入る。
「出番ね」
     
ケイがクルーザを飛ばし、北側の城壁に近付く。
2階のガラス張りの通路で兵士達に囲まれている3人の姿を確認したケイがつぶやいた。
「ハイパーアタッカーズが製造した道具を、カバンに詰め込んで来てよかったわ」
甲板に立ったケイがグレネイド閃光弾を構えた。
「行け!」

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ザット大佐が言う。
「女の奪還が目的という事は、この国の秘密に気付いたな。それならお前達にはここで死んでもらう」
韓信がチラッと外を見る。ケイがグレネイドを構え立っているのが見える。
ザット大佐が右手を挙げ、攻撃の指示を出そうとした瞬間、韓信が叫んだ。
「みんな、目をつぶって下に飛び降りろ!」
ガラスを突き破り、閃光弾が撃ち込まれた。
ピカッ
強烈な光が辺りを包む。3人は下のクルーザーに飛び降りた。
ザット大佐が眩しそうに目を押さえながら叫ぶ。
「柳生、奴らを追え!」
大佐の横にいた長髪の男が、3人を追って飛び降りる。
韓信「ケイちゃん、すぐにクルーザーを出して!」
ケイ「了解!」
柳生がクルーザーの屋根に降りた。疾走するクルーザーの屋根の上で、早紀と柳生が向き合った。
早紀に向かい刀を振り下ろす柳生。早紀は柳生に背中を向けるように抜刀し、国士無双を出した。
※国士無双は韓信流奥義。ひねりを加えた抜刀術。麻雀の役ではない。
     

柳生は刀が当たる瞬間、自ら後方に飛び、湖に落ちた。
柳生は、水面に浮かびながら、クルーザーが離れていくのを見ていた。
 


※この物語はすべてフィクションであり、登場人物および団体は実在しないものであります。

 

 

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