7話 血戦!池田屋!!


見回りを続けていた近藤の所へ隊士の一人が駆け付け報告した。
「尊王攘夷派の浪士達が多数、池田屋に集まっている模様です」
四人は池田屋に向かった。会津藩に応援を要請しているが、来る気配がない。
もたもたしていては、浪士達に気付かれ逃げられる。近藤は四人での突入を決意した。
「ご用改めである!」
近藤が一気に階段を駆け上がる。気付いた浪士の一人が刀を抜いて近藤に斬りかかる。
近藤はそれを一刀のもとに斬り捨てる。浪士は悲鳴を上げながら階段を転がり落ちる。
近藤に続いて沖田、蝉丸が二階に上がろうとすると、沖田に向かい浪士の一人が斬りかかって来た。
沖田は得意の三段突きでこれを仕留め、さらに先に進もうとした所で多量の血を吐いた。沖田は結核にかかっていたのだ。
蝉丸が沖田に叫んだ。
「大丈夫か沖田君!ここは俺に任せ、君は休んでいたまえ」
沖田が答える。
「すいません…蝉丸さん…」
蝉丸は一人二階に上がった。奥に進んでいるのか近藤の姿はない。
一つの部屋に踏み込むと、五人の浪士がばっと出て来て、刀を抜いて蝉丸の前に立った。
(これだけの人数相手にどうやって戦う?…そうだ、韓信さんがピンチの時に使えと小箱をくれたんだった…)
蝉丸は、浪士達にじりじりと部屋の隅に追い詰められながら、懐の小箱に手を伸ばす。
しかし、小箱には鍵が掛かっていた。
(開かない、開かない、鍵はどこだ?)
焦って鍵を探す蝉丸に向かって、浪士の一人が奇声を上げながら斬りかかって来た。
「きぃえええーい!」
蝉丸は、身を守るために咄嗟に小箱を頭の上に持ち上げた。
ガシャアアアーン!
刀が当たり、小箱が砕け散り中身が落ちた。それは何の変哲もないただの鎖であった。
(く、鎖?これで戦うの?)
しかし迷っている暇はなかった。蝉丸は素早く鎖を手に取ると、ビュンビュンと振り回した。
鎖の勢いに押され後退した一人の浪士の顎に蝉丸のアッパーが炸裂し、浪士は大の字になり失神した。
別の浪士が蝉丸に突っ込むが、鎖に足を取られひっくり返った。蝉丸は浪士の喉元に膝を食い込ませた。
「ぐぎゃあああー」
浪士は失神した。
休む間もなくもう一人が斬りかかってくる。
蝉丸は素早く右腕に鎖を巻き付け、その腕で刀を受け止め、ニヤリと笑うと相手の首に鎖を巻き付けた腕を叩きつけぶっ倒す。
一人、もう一人。あっという間に、部屋の中で立っているのは、蝉丸ともう一人の浪士だけとなった。
最後の一人が言う。
「なかなかやるな、流派は何だ?」
蝉丸は肩で息をしながら答えた。
「御獄……蝉丸流…」
最後の浪士が刀を振り上げ突進して来る。蝉丸は鎖を巻き付けた手で刀を弾き飛ばすと懐に入り、浪士の腹にパンチを連打する。
ドスドスドスドスドス…
浪士は脇差しを抜いて蝉丸の背中を刺そうとする。そうはさせるかと蝉丸さらにパンチを連打する。
ドスドスドスドスドス…
ついに浪士は苦しそうに前のめりにぶっ倒れた。蝉丸はその場にがっくり座り込んだ。
そこに奥から近藤が駆け付けて来て、周りを見回して、驚いたように言った。
「これだけの人数を君だけで倒したのか?…やるなー」
「ええ…まあ…」
ぜえぜえしながら、蝉丸が答える。
階下で土方の叫び声がする。
「局長ー!大丈夫かー!応援に来たぞー!」
近藤が蝉丸に言う。
「どうやらトシも来たようだ。蝉丸君、もう一暴れするぞ」
 

 

          

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