4話 捕らえられた女


円がじりじりと縮まり、追い詰められる杏華。その時、囲んでいた男のうち三人が悲鳴を上げ倒れた。
円が崩れ、白装束の女が駆け込んで来た。ジェーンであった。手には刀を持っている。

ここでジェーンについて記しておく。ジェーンはドリー軍曹一門の人。元空軍パイロット。
かつて早紀と一緒に戦国時代の大坂に時間旅行した事がある。
その時の活躍を早紀から聞いた韓信は感激し、ジェーンに刀を与えたという。刀は名刀・大般若長光。
ジェーンは刀の知識はなかったが、訓練を重ね、韓信の剣の剛の部分を自分なりに抽出し、今では鉄をも貫くまでに成長したという。

ジェーンが杏華に言う。
「帰りが遅いから様子を見に来たの。さあ一緒に帰りましょう」
ピエールが叫ぶ。
「えーい、まずはその女から捕らえろ!」
槍を持った男達がジェーンの所に殺到する。
「無駄よ無駄!」
ジェーンは笑いながら、男達が突き出す槍を軽々と叩き折る。男達は「ひえーっ、化け物ー」と怯えながら後退する。
「さあ今のうちよ、行きましょう!」
杏華と共に男達の中を突破しようとするジェーンにピエールが叫んだ。
「そこまでだ!」
ピエールの後ろで20人の男達が鉄砲を構えている。
ピエールが勝ち誇ったようにジェーンに言う。
「君の剣の腕はたいしたものだな。まさか鉄砲隊まで出動させる事になるとは思わなかったよ、しかしこれまでだ。これ以上抵抗するなら、この場で撃ち殺す。二人共、大人しく刀を捨てろ」
二人は悔しそうに刀を捨てた。男達は二人を縛り上げると、どこかに連れ去った。

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ドリー軍曹が呟く。
「二人共、帰りが遅いですねぇ」
杏華が出ていってから、既に4時間が経過している。韓信が早紀に目で合図する。早紀はカバンから白いカラスを取り出した。
「行け、涼風!」
涼風は舞い上がり京の夜空に消えた。
ドリー軍曹が韓信に聞いた。
「ところで韓信さん、私も勉強してみたんですが、蝉丸様が新撰組にいるとすると、歴史通りなら、あと三日で池田家事件に遭遇しますよ。その時は私達も蝉丸様のいる新撰組に加勢するのですか?」
韓信は答えた。
「いいえ。これは新撰組と尊王攘夷派との戦いです。お互いに信念持ってるのでしょうから、部外者の私達が手を出してはいけません」
ドリー軍曹「ふーん、そんなもんですか?」
韓信「そんなもんです」
 

 

          

 


 

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