3話 十一番隊長 蝉丸


三ヶ月後、ドリー軍曹が早紀の事務所にやって来た。「皆さーん、用意は出来てますかー?」
元気よくドアを開けたドリー軍曹は、目を丸くし叫んだ。
「何ですか!そのカッコはー」
まず韓信。いつもの兜ではなく飯綱権現の前立ての付いたちょっと派手目な兜をかぶっている。
驚くべきは早紀。頭には、三宝荒神形兜をかぶり、服は肩の出た赤いミニのドレスを着ている。
※三宝荒神形兜とは、前、右、左に鬼の面が付いた兜。
そしてジェーン、杏華はナースの服を着ているではないか。
ドリー軍曹が韓信に聞いた。
「ナース二人は韓信さんの趣味ですか?」
韓信「いいえ。我ら幕末へ行こうとも、決して幕末の色には染まらない、この服装は、その意志の表れです」
ドリー軍曹は呆れたように言った。
「はいはい。私は、蝉丸様さえ戻れば何でも構いません」
ちなみにこの時のドリー軍曹の服装は、浴衣にリュックに雨傘であった。
五人は京都に向かい、天空僧正が開けた時空の穴から幕末へと旅立った。
 

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近藤が蝉丸を呼んで言った。
「蝉丸君、君は腕も立つし、他の隊士からも好かれている。どうだろう、十一番隊長になってはくれまいか?」
蝉丸は感激した。書物で読んで憧れていた新撰組の隊長に自分が任命された。蝉丸は喜んで答えた。
「はい、お受けいたします」

夜間、韓信達が幕末の京都に降り立った。
目立たなぬよう近くの廃寺に移動し、これからの作戦を立てる事にした。
韓信「まずは、新撰組の詰所に潜入し、蝉丸様の状況を確かめなければならないな」
杏華が答える。
「私が潜入し確かめてきます」
韓信「では頼みますよ。気をつけて」
杏華が祇園の新撰組の詰所に潜入した。
天井裏から中の様子をうかがう。新撰組の隊士達が輪になっている。
その中心で蝉丸が他の隊士の似顔絵を描いて見せている。
皆がそれを見て笑っている。実に楽しそうだ。
「よかった。蝉丸様、無事みたい」

ほっとした杏華が状況を知らせるために、路地を通り広場を走り抜けようとした所で、男に声をかけられた。どうやら外人のようだ。
「そこの女、新撰組を探っていたようだが、お前は尊王攘夷派かそれとも佐幕派か?」
急に声をかけられ、どきっとした杏華であったが、平然を装い答えた。
「あなた誰?」
男が答える。
「私の名はピエール」
杏華も名乗る。
「私の名は杏華。私はただの旅人よ。あなたが言ったどちらでもないわ。先を急いでいるので失礼するわ」
走り去ろうとした杏華を遮るように10人程の槍を持った男達が現れた。
「どうやら簡単には通してくれないみたいね」
杏華は刀を抜くと、突進して来る三人の男達を目にも留まらぬ速さで斬った。
ピエールが叫ぶ。
「円になって囲め!そして徐々に円を縮めてその女を捕らえよ!」
 

 

          

 

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