11.J卿とD卿

 

蝉丸部隊と合流するため、韓信と早紀が長い廊下を走っていると、向こうからジェーンが走って来た。

ジェーン「たった今、イーグルが救出されました。救護班で手当を受けています。韓信さん、様子を見に行ってあげて下さい」

韓信「無用だ、先を急いでいる」

韓信は走り出そうとして、足を止め、ジェーンに言った。「この刀をイーグルに渡してほしい」

韓信は背負っていた刀をジェーンに渡した。よう子の元所持刀、和泉守兼定であった。

二人はまた走り出した。今度は、美幸を乗せた担架を押す恵利華とすれ違った。

韓信と美幸の目が合った。美幸は涙を流しながら韓信に言った。

「ごめんなさい、みんなの情報を喋ってしまいました…」

韓信「別に構わんよ。今度から、もう少し早く喋ったほうがいいぞ」

二人は、大きなホールで蝉丸部隊と合流した。中央には赤い鎧の男が立っている。

韓信「あれは何者ですか?」

蝉丸「あれは甚兵衛様だ。どうやらこの奥が皇帝の部屋らしいのだが、全く近づけない」

そこにドリー軍曹が駆け付けて来た。

蝉丸「おお、ドリー軍曹!記憶は戻ったのか?」

ドリー軍曹「もう大丈夫です。ご心配おかけしました。ところで、あれは誰ですか?」

蝉丸「あれは甚兵衛様だ。今は、J卿と名乗っている」

ドリー軍曹「私に任せて下さい。甚兵衛様と話してきます」

ドリー軍曹が手を振りながら、J卿に走り寄る。

「甚兵衛さまー」

J卿が一振りした青龍円月刀が、ドリー軍曹の腹にのめり込む。

ガシャアアアーン

ドリー軍曹は壁を突き破り、廊下まで吹っ飛ばされた。

「大丈夫ですか?」とお杏が走り寄る。壁の穴からぬっと出て来たのは、D卿であった。手には方天画戟を持っている。

D卿はJ卿に突進しながら、方天画戟を振り下ろす。ガシッと青龍円月刀で受け止めるJ卿。ガツーン、ガツーン…

方天画戟と青龍円月刀がぶつかり合う音が、ホールに響き渡る。

D卿が叫ぶ

「出でよ、赤兎!」

J卿も叫ぶ

「出でよ、絶影!」

二頭の馬が、競り合うように壁を突き破り現れた。

D卿が赤兎に跨がり、J卿が絶影に跨がって、ホールを縦横無尽に駆け、馬上の戦闘が再開された。

二人の力は全くの互角で、2時間を経過しても決着は付かなかった。二人の間に蝉丸が割って入った。

「この勝負、蝉丸が預かる!お互い、戦いを止めろ」二人は戦いを止めた。

J卿はD卿とすれ違いながら「また会おう」と言って、去って行った。

D卿が兜を脱ぐと、元のドリー軍曹に戻った。

ドリー軍曹「さあ行きましょう。皇帝の正体を確かめに」

 

 

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