10.D卿の正体

 

黒いレオタードを着た早紀が、D卿を大広間へと導く。

D卿は方天画戟を手にして、ゆっくりと早紀を追う。大広間の隅には、正座した韓信がいる。

早紀が「D卿、勝負よ!」と村正を抜く。

D卿が韓信の方を見てつぶやく「韓信…御嶽…韓信流…」

早紀がびくっとしたように韓信の方を見た。D卿の記憶はかなり戻っているようだ。

D卿が方天画戟を両手で振り回しながら、早紀に向かっていく。早紀はひらりひらりと攻撃をかわす。

早紀の背後の窓ガラスが次々に割られていく。海風が広間に吹き込んで来る。

D卿が力任せの横薙ぎを出して来る。早紀はそれをしゃがんでかわすと、D卿の目元に水平打ちを放った。

決まった…かと思われたが、D卿は重い方天画戟を右手一本で振りながら、左手で早紀の刀を掴んでガードした。

大理石の柱を背にした早紀目掛け、D卿が方天画戟を振り下ろす。早紀が紙一重でそれをかわす。

方天画戟が柱に食い込み抜けないD卿。一瞬の隙をついて、早紀がD卿の後頭部に村正を振り下ろす。

D卿は振り返りもせず、左手でそれをガシッと受け止めた。

駄目だ。完全に読まれている。ならばと早紀はD卿の手を掴み、回転を始めた。

ところが、D卿は早紀と同じ方向に回転し、ダメージを受けない。

早紀とD卿の目が合った。面頬の奥の目がニヤリと笑ったように見えた。

直後、D卿の重い蹴りが腹に当たり、早紀は2メートル程吹っ飛んだ。危ない!後ろは大理石の柱だ。

ガシャアアアーン

激突する瞬間、韓信がクッションとなって早紀を受け止めた。韓信が早紀の左手に何かを渡した。

早紀は立ち上がり、「D卿、覚悟!」と右手で、村正を投げ付けた。D卿は方天画戟で村正を弾き飛ばした。

しかし、早紀は同時に左手で鋼鉄のヨーヨーを投げていた。さすがのD卿もこれには気付かなかった。

ヨーヨーがD卿の兜の中心に当たり、真っ二つに割れ、床に落ちた。

カシャアアーンー

D卿の顔が見え、その正体が明らかになった。D卿はやはり、ドリー軍曹であった。ドリー軍曹は、呆然と立ち尽くしていた。

ドリー軍曹「髪に…風が当たる…髪に…風が当たる」

ドリー軍曹が頭をブルブル振った。どうやら元に戻ったようだ。韓信の姿を見つけ走り寄って来た。

ドリー軍曹「今まで私は何をやっていたのだろう?どうやら私は、誰かに操られていたようです。韓信さん、私を操っていた者の所に案内して下さい!」

ドリー軍曹が早紀に気付く。

「あなたは誰?もしかして、よう…」

韓信「こらー!」

早紀「私は、早紀です」

韓信「黒幕の所に行く前に、そこの拷問部屋を見てきて下さい」

ドリー軍曹「えっ?何だろう?誰かいるんですか?」

ドリー軍曹は拷問部屋に走って行った。拷問部屋からドリー軍曹の叫び声が聞こえてきた。

「何じゃこりゃ〜!メーティス、どうしたんだー!このDのマークは何なんだ〜!」

ドリー軍曹が走って戻って来た。目にうっすら涙を浮かべている。

ドリー軍曹「私の大事なメーティスにあんな酷い事をするなんて。許せん。絶対に許せん。誰があんな事をしたんですか?」

韓信と早紀は黙っていた。そして心の中で叫んだ。

(あんただよ!)

韓信「この建物のエントランス付近に救護班が待機してます。ドリー軍曹、メーティスをそこに連れていって下さい」

ドリー軍曹は、失神しているメーティスをおぶって救護班に向かった。その姿を見送りながら、韓信が早紀に言った「急いで蝉丸様と合流しよう」

早紀「そうね」

 

 

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