12.黒幕の登場
ドリセミ部隊が、皇帝の部屋に突入した。中は真っ暗であった。
壁一面がスクリーンになっていて、外人の女が拷問されている映像が流されている。映像を見たジェーンが叫ぶ。
「きゃー!これ私じゃない。やめてー、流すのやめてー」
電気がついて、ぱっと部屋が明るくなった。広い部屋の真ん中に、白い覆面の男が座っていた。
蝉丸「あんたが皇帝か?」男「そうだ」
蝉丸「正体を見せろ!」
男「いいだろう、驚くなよ」
男が覆面を脱いだ。
一同(………?)
男「こらー、何だその誰だかわかんないといった表情は」
ドリー軍曹、ジェーンが思い出したように叫んだ。
2人「お前はイーサム!(※)」
蝉丸「お前が黒幕だったのか!」
イーサム「黒幕?本当の意味での黒幕は私ではなくあの男だ」
イーサムが韓信を指差した。
イーサム「韓信は、よう子が子供を作って蒸発した時にこの世界からの引退を考えた。それを引き止めた魅力ある者が3人いる。早紀、イーグル、そしてこの私、イーサムだ。私は黒幕というより、韓信復帰の原動力だ」
ドリー軍曹「私を操ったのは何故だ?」
イーサム「私はあんたの筋書きで、粛清されかけた。今度は、私の筋書きであんたに踊ってもらった」
蝉丸「あんたのような小者が、よくこれだけの帝国を築けたな」
イーサム「私は小者でも私の後ろには日本一の金持ちが付いている。それがこのお方だ!」
イーサムが背後のカーテンを開けた。そこには、培養液に入った脳が置かれてあった。
イーサム「家康公の細胞から作ったクローン家康公だ。まだ脳しか復元していないが…」
家康脳「ユ・キ・ム・ラ・ニ・ク・イ…」
イーサム「私は、家康公が大坂の陣の前に用心のために隠したという埋蔵金のありかを聞き出した。それがここ拷巣島だったのだ。私は莫大な金を手に入れた」
早紀「私はあなたに感謝している。あなたがいたから韓信が戻って来た。でもそろそろ決着をつける時が来たようね」
早紀は村正を抜いた。
イーサム「そうはさせるか。家康公お願いします。奴らを始末して下さい」
家康脳から無数の触手が伸び、全員に絡み付き吊り上げた。
イーサム「今からこの触手に高圧電流を流す。君達は黒焦げになる。さようなら」
その時、遠くでバイクの爆音が聞こえた。
ブロロロ…
段々バイクの音が近づいて来る。扉をぶち破り、ヘルメット、ライダースーツ、バイク、全て赤い男が突っ込んで来た。
触手が男を捕らえようとした瞬間、バイクは高々と舞い上がった。男は、背負っていた十文字槍を家康脳に投げ付ける。グサッ
十文字槍は、家康脳に突き刺さった。
家康脳「ギャアアア…ワ・シ・オ・ニ・ド・モ・コ・ロ・ス・ノ・カ……ユ・キ・ム・ラ……」
触手が力を失い、一同が床に投げ出された。
バイクの男が、背中を向けて去って行こうとするのを、早紀が呼び止めた。
「待って!…幸村さん、ありがとう」
バイクの男は、無言で去って行った。
それを見たイーサムは、背中のジェットを噴射させ、窓から空に舞い上がった。「また会おう。ドリセミの諸君」
恵利華がライフルで狙いを定めながら、蝉丸に聞く。「撃ちますか?」
蝉丸「いや、いい。逃がしてやれ」
一同は、小さくなっていくイーサムの姿を見送った。ドリー軍曹が言った。
「さあ、五本木ヘルズに帰りましょう。仕事がたくさん、たまってます」
(終)
※イーサムとは?
イーサムは、ドリー軍曹の私蔵版に出て来る登場人物。Z国の軍人。ジェーンを拷問(の見物)した人。
ジェーンの拷問ビデオを製作したのがドク将軍にばれて粛清されたと言われている。