7.海上の攻防戦
潮丸は順調に航海を続けていた。
関門海峡を通過してしばらく進んだ所で、急にお杏が叫んだ「前方に50艘程の大船団が待ち構えています」
蝉丸が船団に無線で連絡する
「こちら潮丸。現在、拷巣島に向け航行中。どうか通していただきたい」
船団から返事が帰って来た「こちら拷巣島船団。君達は、包囲されている。大人しく降伏せよ。さもなくば、攻撃を加え海に沈める」
蝉丸が返事する「我々は、仲間を取り戻すため、なんとしてでも拷巣島に渡る!」
一瞬の静寂の後、船団が機関銃による激しい攻撃を加えてきた。
ズダダダダダダダダダダダダダダダダ…
潮丸の周辺に銃撃による煙が立ち込める。煙の中から三艘の無人の屋形船が現れ、ゆっくり船団に近づいていく。
それを見ていた船団側は大笑いした「何だあれは?護衛鑑のつもりかー?構わん、あのボロ船から沈めろ!」
船団が再び激しい銃撃をしてきた
ズダダダダダ…
部下の一人が叫ぶ「あの船、変です。船底の沈みが大きい。何か積んでいます!」
ズダダダダダ…
上官も異変に気付き叫ぶ
「いかん、罠だ!全員避難しろ!」
上官が命令を出した時には屋形船は、船団の前列の船と接触し、大爆発を起こした。
屋形船には、大量の爆薬が積まれていた。折りからの強風に煽られ、次々に引火した船が炎に包まれる。
ズゴゴゴゴー
蝉丸「全速前進。中央を突っ切れ!」
潮丸が炎の海の中を突き進む。
敵の船と接触し、炎に巻き込まれ、傷つきながら船団を突破したその先に、敵の旗艦と思われるクルーザーを発見した。
敵の旗鑑から無線が入った。
「待っていたぞ潮丸の諸君。私は、この船団の提督ネルソン。よくぞここまで辿り着いた。しかし君達を拷巣島に渡らせるわけには行かない」
潮丸が答える。
「こちら潮丸の艦長蝉丸。我々は拷巣島に渡り、仲間を返してもらう」
ネルソン「仕方がない。決着をつけるとしよう」
ネルソンは甲板に出ると、自らバズーカ砲を構え、部下に命じた。
「全速前進!」
潮丸も攻撃態勢に入る。
早紀が素早く潮丸の屋根に飛び乗り、屋根の覆いを取った。そこには、ディビー・クロケットが設置されていた。
(ちなみに核弾頭は取り外してある)
蝉丸「全速前進!」
早紀が屋根の上で髪をなびかせる。
ネルソンがバズーカ砲を、早紀がディビー・クロケットを同時に撃った。空中で砲弾が交差する。
一瞬の静寂の後、ディビー・クロケットの砲弾が、ネルソンの旗鑑の中心に当たった。
ズガガアアアーン
激しい爆発音と共にネルソンが海に投げ出された。
ネルソンは「イー…皇帝…万歳…」と叫びながら海に沈んでいった。
お杏は、バズーカの砲弾が当たる瞬間、舵を大きく右に切った。
砲弾は潮丸の左側に当たり、側面が大破した。
ズゴゴゴォーン
その衝撃で船が揺れ、早紀が海に投げ出されそうになる。韓信は、素早く甲板に飛び出し、早紀を受け止めた。