11話 赤い波
昼近く、それまで眠っていたジェーンがばっと起き上がり、辺りをキョロキョロと見回した。
ジェーン「所長、甚兵衛様」
早紀「傷の具合はどう?」
ジェーン「まだあちこち痛いけど、大分良くなりました。戦いはどうなりましたか?」
早紀「今、大坂方と幕府方が戦闘中。大坂方がかなり押されているわ」
ジェーン「私、悔しい。こっちの時代に来て、拷問されただけなんて。私、何か役に立ちたい!こっちの時代で、生きた証が欲しい!」
早紀「では一つ仕事をしてもらいましょう」
早紀は、ジェーンに耳打ちした。
ジェーン「やってみます!」
ジェーンは目を輝かせ出て行った。
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真田軍は、数を擦り減らしながら、越前軍を突破した。
しかし、戦場には、多くの軍が犇めいている。家康までの距離は絶望的に遠い。
その時、一騎の伝令が戦場を駆け抜けた。
「浅野様、謀叛!浅野様、謀叛!」
伝令は、変装したジェーンであった。
各軍は、うろたえた。幕府軍といっても所詮は、全国の大名軍の寄せ集め。士気は乏しいし、被害に合いたくない。
各軍が中央から、ズルズル引き始めた。幸村と家康の間にぽっかりと道が出来た。
幸村「皆の者、突撃!」
家康の馬印に向かい、真田軍が突進して行く。
家康は、初め、余裕を持って戦局を眺めていたが、ぐんぐん近づいて来る赤い波に恐怖し、錯乱した。
家康(もう逃げられん…)家康は、側にいる(本多)政重に叫んだ「わしは、腹を切る!」
政重は「なりません。ここはお逃げ下され!」と叫び家康を籠に押し込み、逃がした。
真田軍が家康の陣に突っ込んで来た。既に家康の姿はなかった。
兵士の一人が報告する「前方に、すごい早さで逃げて行く籠があります!」
幸村「それだ!内府、逃がさんぞ!」
猛烈な勢いで籠を追う真田軍。
見えた!あの籠だ!!旗本達を蹴散らしながら、幸村が籠に馬上から槍を突き刺した。
グサッ!!
確かに手応えがあった。
旗本達が家康を守ろうと、幸村を取り囲んだ。家康を乗せた籠はどんどん離れて行った…