10話 幸村の秘策
甚兵衛は、ジェーンを叢に寝かせた。
甚兵衛「おい、ジェーン、しっかりしろ!」
揺さぶるが返事がない。甚兵衛は、ジェーンの口に薬を流し込んだ。
薬は「根来の秘薬」と呼ばれる物で、甚兵衛が十年かけて作り上げた万能薬である。
しかし、ジェーンの意識は戻らない。
甚兵衛「ジェーン、起きてくれー!ジェーン、死ぬなー!お前が死んだら…お前が死んだら…早紀が核を撃つー!!」
その時、ジェーンの指がかすかに動き、「うぅ」と小さなうめき声を上げた。薬が効いたようだ。
いつの間にか、甚兵衛の後ろに、戦いを終えた早紀が立っていた。
早紀「甚兵衛様、私がどうかしましたか?」
甚兵衛「いや…何でもない…それより見てくれ、ジェーンが生きてるぞ!」
二人は、ジェーンを荒れ寺に運んだ。ジェーンは、死んだように眠っていた。
甚兵衛「あの薬はかなりよく効く。半日も眠れば、かなり回復するだろう」
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翌朝、大坂方五万五千と幕府方十五万の決戦の時が訪れた。幸村は、茶臼山に陣を構えた。
この日、真田軍は、甲冑・旗指物など武具の全てを赤一色で統一していた。それは、戦場に咲き誇るツツジの花のようであった。
幸村は、秀頼の出馬を待っていた。秀頼が出馬し、味方の士気が上がった所で、幸村が正面から、明石軍が後方から家康を狙い、これを討ち取るのが、幸村最後の策であった。
しかし、秀頼は城を出ようとはしなかった。幸村は、死を決意した。
(こうなれば、突撃を重ね、家康の首を取るのみ)
真田軍は、前面の越前軍に突撃を仕掛けた。