12話 幸村、絶対絶命
真田軍は、旗本の包囲を突破した。家康の危機に、引いていた各大名軍も駆け付け大乱戦となった。
開戦当初、三千人程いた真田軍は散り散りになり、戦場を離脱した頃は、三十人にまで減っていた。
残った兵士達も追撃の軍に突撃し、死んでいく。
安居天神に到着したのは、傷だらけの幸村一人だけであった。見渡すと城から火が上がっているのが見える。
幸村(わしの役目は終わった…)
幸村は、お堂の中に入り、どっかり座り込むと、短刀を首筋に当てて、自害しようとする。
そこに、早紀、甚兵衛、ジェーンの三人が突っ込んで来た。早紀は幸村の短刀を手で払い落とした。
幸村「何者だ?」
早紀「信じられないかもしれませんが、私達は未来から来ました。あなたのこの時代での役割は終わりました。私達と一緒に未来に来ていただきます」
幸村は「どこへでも連れて行け…」と言うと、傷のため、気を失った。
お堂の壁が紫色に光り始め、時空の穴が開いていく。その時、外で大声がする。
「左衛門佐、そこに隠れているのはわかっている。大人しく出て来い!」
甚兵衛が隙間から覗く。
「囲まれたようだな」
どうやら、前田の鉄砲隊に囲まれたようだ。
早紀「では、ご挨拶するとしましょう。ジェーン、これを組み立てて」
早紀は、大きなトランクを指差した。ジェーンはトランクを開けて驚いた。
「これは、ディビー・クロケット!」
ジェーンは軍隊出身のため、武器に詳しかった。
甚兵衛が心配そうに声をかける。
「核、大丈夫?」
早紀「核弾頭は、取り外してあります」
前田隊が鉄砲を撃って来た。その直後、お堂の扉がバタンと開いた。
早紀「発射!」
ズガアアアーン
轟音と共に一本松が薙ぎ倒された。前田隊は驚き後退する。
早紀が叫ぶ
「ぼろ布のようになった男一人連れ去ったとしても、この時代には何の影響もないでしょう。それでは皆さん、さようなら!」
三人は、幸村を担いで時空の穴をくぐった。前田隊が踏み込んだ時には、誰もいなかった…
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時空の穴をくぐり、三人が現代に戻って来た。
天空「おかえり…」
三人は大阪の病院に幸村を運んだ。医者の話では、傷は重いが、何とか命は助かるという。
三日後、三人が見舞いのため病室を訪れたが、そこに幸村の姿はなかった…
(終)