9話 大決戦に紛れて

 

夜間、外の様子を探って来た甚兵衛が戻って来た。「明朝、大決戦があるようだ。各隊が移動し始めている」

早紀「今がチャンスです。ジェーンを助けに行きましょう」

甚兵衛「どの隊に連れ去られたかわからんぞ」

早紀「幟には、並び矢の紋が入ってました。あれはおそらく服部…」

 

二人は、服部の陣を見つけ出し忍び込んだ。移動したためか残っている兵はほとんどいない。

土蔵を見つけ中を覗くと、傷だらけのジェーンが木馬に乗せられたまま失神していた。

甚兵衛「ジェーン、しっかりしろ!」

早紀がジェーンを抱き抱えた甚兵衛と土蔵を出ると、そこには、重蔵と八人の兵士が待ち構えていた。

重蔵「やはり来たな!」

早紀「甚兵衛様、ジェーンの手当てをお願いします」

甚兵衛「承知した」

甚兵衛を追おうとする兵士達を早紀が遮った。

「あなた達の相手は、私がするわ」

兵士達が刀を抜いて、早紀をぐるりと囲んだ。

早紀は、コートを脱ぎ捨てた。下は黒いレオタードに刀を差している。刀は、妙法村正。

兵士達が一斉に早紀に斬りかかる。早紀は、ふわりと跳躍すると包囲陣の外に回り込み、一人残らず、(峰打ちで)倒した。

重蔵「お前、何者だ?名を名乗れ!」

早紀「私は早紀。流派は御獄韓信流」

重蔵「韓信流ー?聞いた事もないわ!」

早紀「あなたはどなた?」

重蔵「わしは服部重蔵。死んだ父の名は半蔵」

早紀「何だ、半蔵じゃないのね、残念」

重蔵「口の達者な女だ。わしも強いぞ。覚悟しろ!」

重蔵が刀を抜いて斬りかかる。早紀はひらりひらりとかわす。重蔵と早紀が正面から向き合い、高速ですれ違う。

重蔵は横薙ぎで早紀の首を狙う。早紀はそれをしゃがんでかわすと、立ち上がりざま、重蔵の目元に※水平打ちを食らわせた。

 

※水平打ちは、韓信が高校の剣道の授業で編み出した技。

 普通、面を打つ時は、竹刀を垂直に振り下ろすが韓信は面に対して水平に打つ事を好んだ。

「目に入ったら危ないでしょう!」と先生にすごく怒られたという…

 

重蔵「うおお、目が見えん…」

早紀は、ふらふらしている重蔵の膝の後ろ側を思いきり蹴った。重蔵は地面に膝を付いた。

早紀「朝まで寝てて」

重蔵の後頭部に村正を(峰打ちで)振り下ろした。

重蔵「ぐはああっ」

重蔵は、前のめりに倒れ、失神した。

 

          

 

 

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