4話 ジェーン捕獲
三人が、時空の穴を抜けると、そこは、1615年の大坂であった。
天空の言った通り、時空の穴は、10分程で小さくなり、やがて見えなくなった。
三人は、安全のため、近くの荒れ寺に移動した。ここで三日間待機し、落ち延びた幸村と安井天神で遭遇する計画である。
夜になり、叢に光る蛍を見たジェーンが叫んだ。
「あっ!何か光ってる」
甚兵衛様「蛍じゃないか」
ジェーン「私、外に行って見てきていいですか?」
早紀「止めなさい。この辺は、幕府方の陣地に近いわ、動き回るのは危険よ」
ジェーン「大丈夫ですって、ちょっとホタルを見てくるだけですから」
ジェーンは、早紀が止めるのも聞かず、外に飛び出して行こうとする。そして思い出したように振り返って、甚兵衛様に言った。
「甚兵衛様、これ渡しときますね」と、原作本を渡す。
甚兵衛様は「おお、ありがとう。後でゆっくり拝見するよ」と懐にしまった。
ジェーンは外に出て行った。
ジェーンは、蛍に夢中なり、隠れ家から離れ、道の近くまで出て来ていた。
運悪く、夜間持ち場を移動する部隊に出くわしてしまった。
雑兵「そこで何をしている!」
ジェーンはハッとして、急いで逃げようとする。雑兵はジェーンに狙いを定め、鉄砲を撃つ。
「ダーーン!!」
鉄砲は足に当たり、ジェーンはその場に倒れた。
指揮官と思われる男がゆっくり近づいて来た。
男「おや、珍しい。異国の女だ。お前、どこの間者だ?後藤か?真田か?」
ジェーンは、無言で男を睨みつけた。
男「まあいい。これから、ゆっくり吐かせてやる」
男は、雑兵達に自分の陣までジェーンを連れて行く指示を出した。
銃声は、隠れ家にいる二人にも聞こえた。二人は、銃声のした方向に急いで走る。
木の陰から覗くと、ジェーンが後ろ手に縛られて、部隊に連行されていく姿が見えた。
甚兵衛様がジェーンを救出しようと一歩踏み出す。枯れ枝を踏み、ガサッと音がした。
雑兵「そこに誰かいるのか!」何人かの雑兵が、鉄砲を撃ちかけてきた。
「ダーーン!」
一発が甚兵衛様の胸に当たった。
甚兵衛様「ああ、何て事だ…」
懐から取り出した原作本には、弾丸がのめり込んでいた。
甚兵衛様「これでは、もう読めない…」
早紀「ここはひとまず、逃げましょう。」
甚兵衛様は、原作本を地面にそっと置くと、早紀と一緒に逃げた。