下水道の死闘
韓信は吊られながら思っていた。
(メーティスは何か勘違いしている…)
韓信の剣の腕はいい。御嶽(おんたけ)新陰流免許皆伝であった。
ただ、格闘技に関してはとても弱っちかった。
必殺技と呼べる物は一つしかなかった。
それはカーロスリベラの必殺パンチ(正確には反則)で、
レフリーの死角をついてパンチ打つふりして肘入れるという物であった。
韓信はそれを3発打ってみた。全く効かなかった。
無駄な体力を使ってかえって意識が遠くなってきた。
そういえば、ドリー軍曹が鶴田って言ってたな…
自分は、長州が好きだったな…案外、世代的に近いのかもな…
などとぼんやり考えていると、蜘蛛が聞いてきた。
「死ぬ前に言い残す事はないか?」
韓信が譫言のように「メーティス、服から胸が…」まで言った所で、
メーティスが口を開いた。「いいえ、全開よ!」
メーティスが初めて喋ったしかも、見ると、何故か 全裸だ!
韓信の目がギランと光ったそして足をばたつかせ始めた。
隅に置いてあるガソリンの入ったポリタンクに当たり、倒れた。
ガソリンが流れ出し、2人の足元に溜まる。
韓信がライターを取り出し、高くかかげる。
蜘蛛は、異変に気付き叫ぶ。「やめろ!やめなさい!」
韓信は、「路線変更!」と叫んでライターを落とした。
ゴォォッという音と共に 2人が炎に包まれた。
蜘蛛が悲鳴をあげながら下水道に飛び込み姿を消した…
韓信は所々焦げていたが何とか無事だった。そして、こう言った。
「ウノ続けるよ、メーティスはそのままでいいよ」