第6話 やよい覚醒

レオンがユキをギロッと睨んで言った。
「お前だね、こいつらをそそのかしたのは。どうやらお仕置きが必要なようだね」
レオンがユキに向かって鞭を振った。うずくまり目を閉じるユキ。
ユキに鞭が当たる瞬間、やよいが飛び出し鞭の先をぐいと掴んだ。レオンが叫ぶ。
「誰だお前は!こいつらの仲間か?」
やよいが答える。
「私はただの観光者。ただあなたの振る舞いが許せなかっただけ」
「許せないだと。面白い。私と勝負するかい?お前は私の最も得意とする武器であの世に送ってやる。
おい、誰か、あれを持って来い!」
レオンはそう叫ぶと部下達に命じ武器を持って来させた。
部下達が運んで来たのは3メートル程の巨大な三股の槍であった。
レオンが槍を手にして楽しそうに言う。
「どう?いいでしょう。私のお気に入りの武器。海神の槍って名付けたのよ。それじゃ行くわよ」
兵士達と殴り合いながら二人の様子を見ていたドリー軍曹が叫びながら、背中に背負った刀をやよいに向かって投げた。
「やよいさん、これを受け取れ!」
バシッと刀を受け取り、やよいが叫ぶ。
「これ何?!」
ドリー軍曹が叫ぶ。
「それは君の刀だ!」
レオンがビュンビュンと槍を振り回しながら、やよいに近づく。
じりじりと後退しながらやよいが叫ぶ。
「私、刀なんて使った事ない!」
ドリー軍曹が兵士ともみ合いながら叫ぶ。
「いいから抜けー!」
やよいは必死に刀を抜こうとするが抜けない。
やよい「抜けない、この刀抜けない!」
「そんな古びた刀では勝負にならんわ!」
レオンが叫びながら、やよいに槍を振り下ろした。やよいは必死で刀を頭の上にかかげ、槍を受けた。
ガシィィーン!!
やよい(何て重い一撃なの…腕が痺れる…)
「何とかかわしたようだな、だが次はないぞ!」
レオンが槍を振り回しながらやよいを追う。やよいは必死で逃げ回りながら、街路樹の陰に身を隠す。
「それで隠れたつもりか!」
叫びながらレオンが槍を力任せに振った。
グシャアーン!
街路樹が真っ二つになり、やよいの方に倒れる。木の下敷きになり失神するやよい。
やよいの意識に何者かの声が聞こえる。
…………目覚めよ、我が持ち主……
やよいが問い掛ける。
(私の心に直接話しかけてくるあなたは誰?)
………戦いの日々を思い出せ、敵を目で見ようとするな、心で捕らえるのだ、それが夢想韓信流……
(夢想韓信流?)
……信じよ。自分の力を……
(自分の力…)
やよいが目を覚まし、ふらっと立ち上がった。
それを見たレオンがつぶやいた。
「まだ立ち上がる力が残っていたとは驚いた。だが今度こそ最後だ。私の全力の一撃でお前を葬る」
やよいが刀に手を掛け、目を閉じた。
「目を閉じるとはどういうつもりだ、勝負を諦めたか?構わん。行くぞ!」
レオンが凄まじい勢いの横薙ぎを仕掛ける。
やよい(見えた!)
やよいが叫びながら刀を抜く。

                                              
「夢想韓信流奥義、背水の陣!」
ガキィィーン!!
やよいの放った一撃が槍をへし折り、レオンの肋骨に食い込む。
「ぐはあー!」
レオンは衝撃で吹っ飛ばされ、背後の街路樹にぶち当たった。
戦いを終えたドリー軍曹がやよいの所に駆け付け声をかける。
「すごいじゃないですか、やよいさん。あんな技、どこで覚えたんですか?」
やよいが息を弾ませながら答える。
「私にもわからない。気がついた時には出ていたの…」
「これで…勝ったと…思うなよ…我らにはまだ切り札がある…お前らに…勝ち目はない…」
レオンはそうつぶやくと、がくっと気を失った。

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椅子に座り、ゆったりとワインを飲んでいた提督に、物見からの連絡が入る。
「大変です!謎の二人組の乱入により、レオン様、ボルト兄弟が敗れました」
提督が落ち着いた口調で答える。
「慌てるな。我らにはまだ切り札がある。メガ・イカロスを出動させろ。それで全てはうまく行く」
 

            

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