最終話 韓信vs最強軍団

メガ・イカロスに出動命令が下った。隊長のナカジマが皆を集め叫ぶ。
「今、提督からの出動命令が出た。俺達が出れば危機は好機に変わる。
俺達は無敵の集団、メガ・イカロス。行くぞ、みんな!」
「うおおーっ!」
全員がそれに答え大声を上げる。隊員達が準備を進める部屋の外で鈴の音が聞こえた。
リン、リン、リン…
隊員の一人が叫ぶ。
「誰だ!」
ドアがゆっくり開いて、韓信が部屋に入って来た。
「毎度」
隊員が韓信に叫ぶ。
「お前、何者だ?名を名乗れ!」
韓信が答える。
「私は殺人鬼、韓信。あなた達をあの世に送るために参りました」
ナカジマが答える。
「あの世だと?危機を好機に変える現代最強の集団、このメガ・イカロスを?
面白い、やれるものならやってみろ!」
韓信がゆっくり小豆長光を抜いた。四人の隊員が韓信に向かって鉄棒を振り下ろす。
韓信は四人の間をすり抜けながら、立て続けに四人を斬った。
今度は二人の隊員が韓信の背後に回り込み、同時に飛び上がると、韓信の背中に鉄棒を振り下ろした。
「きぃえーい!」
ドガッ!
韓信は倒れるが素早く振り向き一人を刺し、刀を抜くと一人の首を刎ねた。
三人が同時に向かって来る。
韓信が一人の足を払いひっくり返すともう一人が組み付き韓信の動きを止める。
もう一人が韓信の肩目掛けて鉄棒を振り下ろす。
ガギッ!
韓信が組み付いている男を刺して振りほどき、もう一撃喰らわせようと向かって来る男を逆袈裟に斬った。
倒れていた男が、はいつくばりながら、その場から逃れようとする。
「ひぃ、助けて!」
韓信は男の背中に刀を突き立てた。
グサッ!
韓信がナカジマの前に歩み寄り言った。
「残るはあんた一人になったよ」
ナカジマが唇を震わせ叫ぶ。
「俺の大事な部下を…許さん!覚悟しろ、このポンコツ!」
「かかって来い、※フニャチン野郎」
韓信、ニヤリと笑う。
※プロレスラー真壁がよく使う言葉。他にウ〇コチ〇チ〇などがある。
ナカジマが鉄棒を横構えに構える。韓信も小豆長光を水平に構える。
一瞬の静寂の後、斬りかかろうとする韓信に向け、ナカジマが口に含んだ毒液を吹き付けた。
動きを止める韓信。
「もらった!」
叫びながら振ったナカジマの鉄棒が韓信の肋骨にぶち当たる。
グキッ!
「ひい、はっはー!俺の勝ちだ!」
ナカジマが狂喜して叫んだ。
韓信がゆっくり口を開いた。
「なかなかいい一撃だ。だが踏み込みが足らん!」
韓信が踏み込みながら、刀を振り抜いた。
刀はナカジマの脇腹に食い込み、上半身が吹っ飛んだ。
ドスン!
床に転がるナカジマの上半身を横目に見ながら、韓信は部屋を出た。
長い廊下を進み、一番奥の部屋のドアを韓信が開けた。中には誰もいない。
不意に物陰から提督が現れる。提督は刀で韓信の背中を斬りつける。
ドサッと韓信が床に倒れる。
提督が叫ぶ。
「ここまで来たのは誉めてやる。だがこれで終わりだ!」
韓信は、提督の突きを紙一重でかわし、刀を持つ手首をがしっと掴んだ。
提督がわめく。
「離せこら、私をどうするつもりだ?」
韓信が答える。
「あんたには、自殺のシナリオを用意した」
韓信は、提督をデスクに座らせ、刀を自分の腹に向けさせた。
提督「おい、待てよ。私を殺しても何も変わらんぞ!」
韓信「そうかもね」
提督「お前を動かしてる物は何だ?国を思う心か?それとも薄っぺらい正義か?」
韓信「動かしてる物?多分、狂気じゃないかな…」
提督「何わけのわかんない事…ぐはああ!」
韓信は、提督の腹に刀を突き刺し、自殺であるかのように刀を握らせると、非常ベルを押し、部屋を出た。

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兵士達を追い払い、チサトを救出した民衆が、日本を取り返すために立ち上がった。
目指すは提督本部。集団の中に、ドリー軍曹とやよいの姿もあった。
提督本部の門前に、韓信がぽつんと座っているのをやよいが見つける。
「どこ行ってたの韓信?傷だらけじゃない!」
韓信が答える。
「魚屋の喧嘩を見物してたら、巻き込まれてひどい目にあったよ。そんな事よりどうやら提督、自殺したらしいよ」
指導者を失い大混乱している提督本部に、民衆がなだれ込んだ。
民衆は、ほとんど抵抗を受ける事なく、本部を征圧した。

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ドリー軍曹、韓信、やよいがこの時代と別れる日がやって来た。
開かれた時空の穴の前で、韓信がチサトに言う。
「日本を取り返すのは、大変だと思うけど、がんばってね」
チサトが答える。
「わかってる。戦う心を忘れずに、何度敗れても、いつの日か、日本を取り戻すつもりだ」
ユキがドリー軍曹に聞いた。
「ドリーさん、また、会えるよね?」
ドリー軍曹が笑顔で答えた。
「ああ、きっとまた会えるさ」
三人は時空の穴をくぐり、現代へと戻って行った。

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現代に戻って来たやよいが驚きの声を上げる。
「まあ、この散らかりようは何なの?」
天空僧正が答える。
「聞いとくれ。大変な事が起きたんじゃよ」


   (終)

 

      

 

 

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