第４話　ドリーの奮闘

物見から知らせが入る。
「提督本部の門前に、カリサ三姉妹の死体が捨てられています。
さらに、明日、バスティーユ公園でチサト様の処刑が行われるようです！」
全員を絶望の空気が包み込む。
「ああ…チサトねーさん…」
ユキは、ポケットから紙切れを取り出し、涙を流しながら祈った。
その姿を見たドリー軍曹がユキに聞く。
「それは？」
「これは私が描いた絵です。私が読んだ古い本、備忘録に、三人組の話が出て来ます。
この国にはかつて三人組という人達がいたそうです。
三人組はどんな大きな力にも屈する事なく向かっていったといいます。
ああ…私も三人組のような力が欲しい…私に出来る事はこうして祈る事だけ。
ドリーさん、三人組について何か知りませんか？」
「いや…」
ドリー軍曹は小さく答えた。
（備忘録…私が書いたという本の名前だ）
ドリー軍曹は何かを決意したかのように、韓信とやよいの方に近づき言った。
「私はドリセミ本部のあった場所に行ってみます。そこに何か希望を見出だせるかもしれない。
二人はここで待っていて下さい」
やよいが答えた。
「気をつけて…」
置き捨ててあったスクーターに乗り、ドリセミ本部のあった場所を目指し走るドリー軍曹。
しかし、警官の乗るバイクに発見されてしまう。
「そこの不審者、止まれ！」
警官がマイクで叫びながら、バイクで追跡して来る。
ドリー軍曹は必死で逃げようとするが、あっという間に追い付かれ、警棒で背中を激しく打たれる。
スクーターから放り出され、路上にうずくまるドリー軍曹。
バイクの警官がもう一撃食らわそうとＵターンして近づいて来る。
ドリー軍曹はバッと立ち上がり、警官に飛び付きバイクごとひっくり返した。
よろよろと立ち上がり警官の乗っていたバイクに乗り、また走り出すドリー軍曹。
警察の追跡を何度も振り切り、先を急ごうとするドリー軍曹であったが、
とうとうニュー・レインボー・ブリッジの中央で追い詰められる。
両端からグリーンのライトのパトカーが近づいて来て、一斉に捕縛用の金網を発射した。
「うおーりゃー！」
ドリー軍曹は叫びながら、海に飛び込んだ。
警察はダイバーを動員して海を捜したが、ドリー軍曹を発見する事はできなかった。

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拷問部屋では、チサトが木馬に乗せられていた。
レオンがチサトを見ながら言う。
「お前の処刑が明日と決まったよ。最後のチャンスをやろう。
仲間の隠れ場所を白状するなら、お前の処刑を取りやめてやるよ。どうだい？」
チサトは静かにはっきりと答えた。
「しゃべるつもりはない。殺すなら殺せ」
「この、生意気な事言いやがって！」
レオンはカッとなり、チサトの首を押さえ付け前のめりにさせ、木馬の背に強く押し付けた。
「うぐあああああ！」
レオンが部下に命じ、チサトの足首に重りを付けさせた。
「ぐああああーっ！」
悲鳴を楽しむように、チサトの体を揺さぶるレオン。それでもチサトは白状しない。
レオンが部下に命じた。
「おい、あれを持って来い！」
部下が持って来たのは、真っ赤に熱せられたＳの字の刻印であった。
刻印を手にしたレオンがチサトに聞く。
「これが最後だよ。隠れ家を言いな」
チサトは黙って、目を閉じた。
レオンがチサトの乳房に刻印を押し当てた。

　　　　　　　　　　　　
ジュューッ！
「ギャアアアアアア！」
チサトは大きな悲鳴を上げ失神した。
「こいつを明日まで牢にぶち込んでおけ！」
レオンはそう部下に命じ、部屋を出た。

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その頃、ドリー軍曹は土砂を運ぶトラックの荷台に忍び込み、五本木ヘルズを目指していた。
途中、検問があったが土砂深くに潜り込む事により警察の目をかわしたドリー軍曹はやっとの事で
ドリセミ本部の場所にたどり着いた。
しかし、もうそこにはドリセミ本部はなく、がらんとした空地になっていた。
空地の隅の小さな祠の前でがっくりと座り込むドリー軍曹。
「やはり、この時代にドリセミは存在しなかったか…」
その時、祠から緑色のやさしい光が発せられ、ドリー軍曹を照らした。
「な、何だ？」
ドリー軍曹の目の前に、美しい女の立体映像が現れる。
「私はコサメ。ミゾレの孫。5代目管理人にして、ドリセミの代表。
あなたがこの映像を見ている頃には、おそらくドリセミは存在していないでしょう。
私は願っています。あなたが生きている時代が平和である事を。
でももしあなたが自由を失い苦しんでいるのなら、私はあなたの力になりたい。
これを…あなたに…送ります…」
映像がふっと消え、祠の扉がガタンと開いた。
中を覗いたドリー軍曹が驚きの声を上げる。
「こ、これは韓信さんの小豆長光と私の浴衣だ！それに何だこの見た事のない刀は？
柄の部分に菊の紋が彫ってある。これで奴らと戦えるぞ…」
ドリー軍曹の体に闘志がみなぎった。