第五話 歴史はいつ作られる(byボテン)

「よし、一旦上げて」
大柄な男とゲアハルトの二人かがりで、サマンサを吊っているロープを引っ張り上げる。
サマンサは氷風呂に長時間浸けられて、意識を失っていた。
「この女、ただものじゃないわね」
ハイデはこの女の体力、精神力に驚いていた。どんなに訓練されたスパイでもこんな長時間氷風呂につければ、狂ったように叫んで自白するか、絶命する。

サマンサは氷水を入れた樽に浸けられては、引きあげられ、少し体温が戻ると再び氷の樽に浸けられ……それをもう何十回と繰り返されたが、サマンサは何も喋らなかった。
業を煮やしたハイデは氷を大量に追加した樽にサマンサを2時間近く浸した。
サマンサの唇は紫色になり、段々意識が薄れていった。
ハイデはその間ずっと尋問を続けたが、サマンサからはスターリングラードの戦い、イタリアの降伏、ノルマンディ上陸と何やら意味不明なことばかりで、意識を失う直前にサマンサが言った言葉が、「1945年5月にドイツは降伏する……」だった。

1941年12月8日現在、ソ連に攻め込んだ部隊が大寒波のため撤退を始めているという情報以外、何らドイツが負ける様な兆候は一切ない。
ハイデはオランダ、ベルギーと降伏させ、フランスまでも休戦を申し入れさせた、乗りに乗っている我がドイツ軍が戦争に負けるなんて考えられなかった。対ソ連のバルバロッサ作戦だって、大寒波がたまたまソ連に味方しただけだ。
この女は気が狂っているのか、はたまた偽情報を流して我々を混乱させようとしているのか……いずれにしてもこの女から真実を聞き出す必要がある。
「起きろ、起きろ!」
ハイデはサマンサの頬を乱暴に叩いた。
「ウッウウ……寒いわ……」
「お前は何者だ。レジスタンスか?連合軍のスパイか?どっちだ?」
「それは知らない方がいいわよ……絶望感に苛まれるわ」
「フザケンナ!」
ハイデはサマンサの頬を何発も引っ叩いた。体の冷え切ったサマンサは痛みも感じず、されるままだった。
「血の巡りが戻ったようね、また冷やしてあげるわ」
ハイデが合図を送ると、大柄な男がロープを吊り上げた。サマンサは中腰になりタイミングを計り床を蹴り上げて飛び上がると大柄な男に向かて飛び蹴りをした。大柄な男はバランスを崩し、勢いよく樽に頭を打って意識を失った。
「??……お前、いい加減にしろ!」
ハイデとゲアハルトがルガーを構えた。
「抵抗はしないわ」
サマンサは縛られた両手を頭の後ろに持って行った。もう抵抗しないポーズだった。

拷問は中断され、サマンサは独房に入れられた。独房まではゲアハルトがついてきた。
「この後、ドイツはどうなるんだ……」
「それは貴方は知らない方がいいわ」
ゲアハルトが不安そうな表情になった。
 
     ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

「ただいまぁ〜」
韓信、早紀、ドリー軍曹の3人が現代に戻ってきた。三人組は気ままな時間旅行を続けていた。
「サマンサは来ていない?」
ドリー軍曹は留守番していたお杏に聞くいた。
「私もほんの少し前に来たから。そうね、サマンサは見ていないわ」
「あれ?お杏さん、着物じゃないの?」
韓信が洋服姿のお杏に聞いた。
「何言ってんの?ドイツ帝国日本では随分昔に着物は廃止になったのよ」
「ドイツ帝国日本??」
「韓信さんも、早く着替えないとゲシュタポに捕まるわよ。ドリー軍曹も早く浴衣を脱いで……」
バーン
その時勢いよくドアが開いて、まさにハーケンクロイツのマークの入った腕章をした警察官が、G36を手に部屋になだれ込んできた。
「お前、何だその格好は?」
リーダー格の男がドリー軍曹に言う。
「はぁ?映画の撮影と聞いてやってきたんですがぁ?何か私たちに用ですかぁ?」
ドリー軍曹はおどけた振りをしながら、目で韓信に合図を送る。
「この野郎、ナチスをバカにしているな。わかった、死にたいんだな。よし、願いを叶えてやる。男二人は射殺、女は取調室へ連れて行け!じっくりと話を聞いてやる」
リーダー格の男が早紀の顔を触ろうとした瞬間、韓信と早紀は刀を抜き、警察官を次々と切り倒して行った。警察官はあっという間に韓信たちに切り捨てられた。

「何か変だな……」
ドリー軍曹がG36を拾いながら言った。
「とりあえず、逃げましょう」
韓信はそう言いながら刀の血を振り払い、鞘に納めた。
「ダメよ、深夜の外出は禁止されているわ」
お杏は今にも泣き出しそうな顔だった。そこに勇ましいドリセミ・ヒロインの面影はなかった。
「わかった、お杏。でも私たちはここにいられれない。私たちは外に出る」
ドリー軍曹がお杏に言った。

ドリー軍曹はお杏を残して、韓信、早紀、天空僧正の4人で五本木ヘルズを出た。外は静まり返っていた。
「お前ら、止まれ!」
五本木ヘルズを出たところで、すぐに警察隊に見つかってしまった。
「逃げろ〜」
ドリー軍曹は警察隊と反対方向に走り出す。
ドッドッドッドッ……
警官隊は静止を無視して逃げ出す4人に向ってG36を撃ってくる。ドリー軍曹はG36の安全装置を外して応戦すると、韓信は天空僧正を背負い一目散に走り出す。
 
     ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

ンンッグウウウウッッウウッッ、ウウウッッ、ウウウウッッ……
サマンサの体に電流が走り、体を反らせて小刻みに痙攣させた。
サマンサは裸のまま、肘かけ付きの椅子に拘束されている。サマンサの両乳首にはそれぞれ電極が取り付けられ、電極はサマンサの正面の机に置かれた操作パネルに繋がっていた。そこには ゲアハルトが座っていて、ダイアルを操作している。
「よし!」
ハイデが合図を送ると、ゲアハルトが電気パネルのダイヤルを0に戻す。
ハゥッ
体中の緊張が解けて、サマンサはドサッと椅子に体を沈めた。

「さあ、未来から来たお嬢さんとやら、そろそろ色々と喋ってほしいわね」
ハイデはサマンサの汗で濡れた髪の毛を掴んで自分の方に顔を向けさせる。
「いいわ、何でも話してあげる。そうね、ドイツが負けるまでの道のりでも話してあげましょうか?それともアウシュビッツ収容所でのナチの悪事がいいかしら」
「なぜお前がアウシュビッツ収容所のことを知っている!語るに落ちたな、連合軍のスパイめ!!やれ!」
ハイデが合図を送ると、ゲアハルトがゆっくりとダイヤルを回す。電極からサマンサの体に電気が流れ込む。
グンンッウウゥゥウウッッウアアアアアッッッアアア〜〜〜〜
サマンサは電極を付けられた乳首を迫り出すように体を反らせ、椅子から起き上がりそうなくらい体を激しく震わせた。
「よし!」
約3分間、電気を流すとハイデはゲアハルトに合図を送る。
ゲアハルトがダイヤルを戻すとサマンサは椅子の上でぐったりとなり、ハァハァと荒い息をして始めた。
「コイツ、どんな訓練を受けてきたんだ……」
もうかれこれ2時間は電気拷問を続けてる。ハイデにとって、これだけ責めても全く心の折れないスパイは初めてだった。
「さあ、知っていることを全て話すのだ。連合軍はどこまでこちらの情報を知っているのだ」
ハイデはサマンサの髪を掴み激しく揺さぶった。電気責めでサマンサは頭の芯が痛かった。
ンンンッググッ
しかし、サマンサはうめき声を出すだけで、何も話す様子はなかった。
「仕方ない。もっと苦しみたいみたいだな」
ハイデはニヤリと笑って、サマンサの局部の合わせ目を優しく愛撫して、陰核を隆起させるとそこに電極を挟む。
ングッ
「もう一つ」
今度は筒状の電極に潤滑油をたっぷりとつけるとサマンサの腰を持ち上げ、肛門に差し込んだ。
ウウゥッッ
サマンサは呻き声を出しただけで抵抗しなかった。いや正確には長時間に渡る電気拷問により体が言うことを聞かなかったのだ。
「今度は敏感な4か所から電気が流れる。苦しいぞ。耐えられる?今なら苦しまなくても済むよ。さあ連合軍の情報をしゃべりなさい」
「ハァ、ハァ・・・間もなくアメリカが参戦してくる……ハァ、そうなれば……そうなれば、ドイツは、グギャアアアアア〜〜〜〜〜〜」
話している途中でハイデが合図を送ったため、両乳首、陰核、肛門の4か所から一斉にサマンサの体に電気が流れ、椅子の上で体を反らせて苦しがった。
グワアアアアアァァァアアアアアァァァァァ〜〜〜〜
肛門に差し込まれた電極からは、激しい痛みが脳天に向かって駆け上がり、腸と言わず内臓を焼くような激しい痛みにサマンサは悲鳴を上げ続けた。
 
     ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

ドリー軍曹たち4人は、五本木ヘルズ近くの五本木図書館に忍び込んだ。建物はそのままだったが、至る所にハーケンクロイツの旗が掲げられていた。
世界史の本を見て、4人は驚いた。何と第二次世界大戦において日本・ドイツ・イタリアが勝ち、その後ドイツが日本とイタリアを統一していた。
「……これはいったい……いったいどういうことだ……」
ドリー軍曹と韓信は顔を見合わせた。
「エッ?1942年1月ににクーデターを起こし独裁者ヒトラーの暗殺に成功したゲアハルト・ブラッハーがドイツを統治し、謎の預言者サマンサの助言により、その後の戦闘を有利に進め……ねえ、このサマンサって、まさか……」
ドサッ!早紀は動揺して持っていた歴史書を落としてしまった。
「天空僧正、まさか私たちが時空の旅をしている間にサマンサもj巻き込んだのでしょうか??」
韓信が聞いた。
「いや、それはありえん話しじゃ」
「何故です、天空僧正」
「わしの能力では時間の移動しかできんからじゃ」
「では何故……時間旅行をしている間に世界の情勢が変わってしまったのです!」
ドリー軍曹がそう言いながら歴史の本を拾い、もう一度開いた。
「考えられるは、サマンサとやらが時空の穴に落ちて、その中で暴れたのではないじゃろうか。もしも暴れると時間だけではなく空間まで飛ばされてしてしまうこともあるのじゃ」
「……と言うことは、サマンサさんはドリー軍曹の執務室に来ていたのね。天空僧正、気がつかなかったの?」
早紀が天空僧正を問い詰めるように言った。
「あっ、いや、少々居眠りを……」

 

        

 

右クリックを禁止する