スライムバスター外伝・メタリカと盗賊
作:タローさん(一部 11-47)
人間には向き不向きがある。
五年前から出現した新種のスライム。
淫魔と融合し、性感ダメージでしか倒すことが出来なくなったそれのせいで、今までの戦士、魔法使い、僧侶は時代遅れ、今じゃスライムバスターが人気の職業だ。
じゃあ、みんながスライムバスターになれるかと言ったら話は別。
世の中、女を満足させるようなテクニックやらスタミナやらに優れた人間ばかりじゃない。
ついでに、どんな時代遅れの職業だとしても、昔から修練しているものに就くだろ?
だから俺の職業は「盗賊」。
そう。戦士でも魔法使いでも僧侶でもなく、商人や遊び人と同じ色物扱いされるアレさ。
精々罠を探したり、宝箱の鍵を開けることくらいしか出来ない職業。
ただ言っとくけど、人様の家から物を拝借したことはないぜ。
いや、モンスターの家とか、悪徳領主の横領の書類とかはあったかな……
ま、何にしても法に触れたことはない。
……スレスレだが。
ただこれでも俺、盗賊としてのレベルは高いんだぜ?
昔ながらのモンスターならナイフ一本でも戦い抜く自信はある。
昔ながらの、だけどな。
だが生憎と――今のスライムに太刀打ちできる自信はない。
……「どうして?」って……き、聞くなよ、そんなこと。
とにかく、そんな俺がどうして今まで生き残ってきたかって言うと――
簡単に言えば足だ。脚力、俊敏性。
今じゃすっかり値崩れした俊敏性アップの魔法具と、ちょっと高かったが、相手がスライムか分別できるゴーグルを使って、スライムを見つけたら即ダッシュで逃げてきた。
情けないって言うなよ。
俺だって思ってるんだ。
しかもスライム狩人やスライムバスターとパーティを組めば、俺よりずーっとレベルが下の人に色々言われるんだろ。
……いや、分かってるんだぜ? くだらない自信は命取りだって。
それでもやっぱ、ダメでさ……
今は一匹狼で古びたダンジョンの宝箱をあさって、その日暮らし。
時代遅れの盗賊のわびしい人生だ。
これで恋人でもいれば話は別かもしれないが――俺にそんな甲斐性がある訳もなく、今もまた旅の途中で、泉を見つけて休憩を取っていた時だった。
※ ※ ※
「――お兄さんっ♪ こんにちはっ♪」
可愛らしい女の子の声が聞こえて振り返ると――そこには。
「……………っ!?」
俺は息を飲んだ。
そこには、可愛らしい女の子が立っていたからだ。
短いショートカットに、猫のような大きな瞳。
ちらりと見える八重歯が魅力的だ。
スレンダーながら扇情的な体に動きやすそうな格好――黒いタンクトップ、それにショートGパンというスタイルだ。
ハッキリ言って、物凄い好みのタイプだ……
俺はつい見蕩れてしまっていた……
あと胸があったら完璧……
――って違う!
「お前……スライムか?」
「ウン! ボク、メタリカーっ! あ、でもね――」
……やっぱりスライムか。
俺は心のどこかで物凄くガッカリしていた。
くそぉ……生身の人間だったら……って、生身でもムリだろうけど……
……ええい! 撤退だーっ!!!!!!!!!!!
俺は魔法具の力を解放して一気に逃げ出した!
全速力で森の中に入り、泉がとてつもなく遠く離れた頃、もう大丈夫だろうと思って足を止める。
……もったいないことをしたな。
スライムとは言え、あれほど好みの女の子と会える機会なんてそうそうないだろうに……
「――ほぇぇ……足速いんだねー」
「!?」
俺が振り返ると、そこにはまたメタリカがちょこんと立っていた。
にっこりと微笑みの直撃を受けてドキッとしてしまう。
「でも、残念でしたっ♪ ランクアップする前なら置いてけぼりになっちゃったかもしれないけどー、今のボクには勝てなかったねっ♪」
メタリカはゆっくりと、俺の方に歩み寄ると顔を覗き込んで――
「んー。でも逃げるようとするなんて珍しいね。大体のスライムバスターさんは目の色変えてやっつけようとするのにー……」
そ、そうか……この娘! メタルスライムなのかっ!?
いや、でも――俺の今の速度ならメタルスライムより速いはず……ま、まさかっ!?
「お前、はぐれ……メタル……?」
「ピンポーンっ♪ えへへ、良かったぁ……すっかり忘れられちゃってるかと思ってたよぉ……それともお兄さん、スライムバスターさんじゃ、ない?」
……ギクリっ!
はぐれメタリカが俺の正体に気付き始めている。
このままじゃヤバイっ!
早く逃げないと……
「逃げないで……」
ふわっと……良い匂いがしたかと思うと、俺の体ははぐれメタリカによって優しく抱きしめられてしまった……
……あぁ……温かくって、肌が触れ合っただけでどんどん心地良くなって……俺の方が体が大きいのにどんどんと包み込まれてしまう……
「えへへっ、すぐに魅了されちゃうなんて、やっぱり素人さんなんだー? 淫魔とするの……ううん、女の子とするのも初めてなの?」
はぐれメタリカの甘美な声に促されて、こくりと頷いてしまう。
すると、はぐれメタリカはすごく嬉しそうな声で――
「じゃあ、ボクがキミの初めての相手なんだー? えへへっ……」
にっこりと裏表のない笑顔で言ってくれる……
……やばいよぉ……そんな愛らしいセリフ……こんな可愛い娘に言われたら、余計抵抗が出来なくなってくるよぉ……
「……キス、しちゃうね?」
間近で色っぽく微笑むと、はぐれメタリカは柔らかくて薄い唇をそっとつけてきた……
ちゅっ、ちゅっと……恋人にするような軽いキス……
ただ、それだけで俺はとてつもない幸福感に包まれてしまう……
「せっかくだから、キミ好みの女の子になってあげる♪ キミの心……ボクに見せて……ね?」
(選択肢)
1・心を見せる
2・メタリカを拒む
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