「おのれ……スライムバスター!!」
僕のほうをキッと睨みつけるルシェ。
大丈夫、美しい女性に見つめられるのは慣れている。
それにしてもこのルシェという淫魔……ライムと同じくらい綺麗だ。
一般的にスライム族はみんな美しいのだが、やはり格の違いというのは存在する。
胸の辺りまでまっすぐに伸びた深い緑色の髪。
額の上で輝いている金色の髪留めがアクセントとなって、彼女の美しさを際立てている。
目は切れ長というほどではないが、大きくてまつげが長い。
上流階級の令嬢がそのまま戦士になったかのようなたたずまいを見せている。
手足は言うまでもなくすらりとして長い。
真っ白な美しい肌が全身を包む衣装と見事に調和している。
マルクもきっと魅了されてしまったはずだ。
しかも淫気の質がハンパなく濃い!!
気を抜くと一気に虜にされてしまうレベルだ。
「キミがルシェだね。僕の家に忍び込ん……ぐああああぁぁっ!!!」
「私が先よ、ウィル」
僕の片耳を思いっきり引っ張るライム。
せっかく敵を威嚇しようとしていたのに……ひどい。耳がまた痛くなった…………
「久しぶりね、ルシェ」
「ええ、本当ですわ」
微笑む二人の間には確実に視線の火花が散っていた。
かつての淫界の同僚は劇的なほど立場が変化していた。
しかしお互いのライバル心だけは変わっていないようだ。
「リィナはどうしたの?どこにいったの??」
辺りを見回すライムだったが、リィナの姿はどこにもない。
「彼女はそこにいる坊やが倒してしまいましたのよ」
ライムの問いかけにため息混じりに答えるルシェ。
ルシェは僕の後ろで横になっているマルクを指差した。
「彼女を助けに来た、といいながらも結局は倒してしまったのですから……私はリィナの仇を討つために戦っていたのですよ」
ゆっくりとライムに近づいて手を握るルシェ。
ライムは身動きせずに黙っている。
「リィナはあなたの妹も同然。ライム、私と共に人間たちを始末することを誓いなさい! それとも裏切り者として処刑されたいのですか?」
なるほど、淫界参謀だけあってなかなかの策士だ……
ここでライムが「YES」と言えば僕とマルクを簡単に始末できるし、「NO」と言えばライムを堂々と葬り去る口実ができる。
しかしルシェが熱弁を振るったにも関わらず、ライムはめんどくさそうにその手を払いのけた。
「ルシェ……あなたに言いたいことはいくつかあるけど、私は先を急ぐわ」
「なんですって?」
ライムの意外な言葉に戸惑うルシェ。
きっと僕と二人がかりでマルクの敵討ちをするとでも思っていたのだろう。
「この先にいる女王様と話がしたいの。いいでしょう?」
「そんな勝手な申し出を私が受け入れるとでも思っているのですかっ!」
ルシェの体が突然3体に増えた!
「ライムを捕らえなさい!!」
ルシェが命令すると、増殖した『ルシェ』は小さく頷いた。
真横を通り抜けようとするライムの体に掴みかかろうと、分身が一斉にライムに襲い掛かる!!
「ずいぶん甘く見られたものね……」
しかしライムの体に分身たちが触れることはなかった。
「なっ……ああぁぁ!!」
「はわあぁぁっ!!」
「ひいいいぃ……イくぅ♪」
3体のルシェが蒸発するかのように消え去った。
ライムの体を覆う紅の淫気がルシェの分身体を瞬殺してしまった!
くるりと振り向いてルシェを睨みつけるライム。
「そんな魂の入ってない人形で私を捕らえられるわけないでしょう? 来るならあなた自身が来なさいよ!!」
「お、おのれ……!!!」
僕のほうからルシェの表情は見えなかったけれど、この上なく悔しい顔をしていたに違いない。
肩や足が小さく震えているのはわかった。
「でも、あなたの相手はウィルに譲るわ。私は先を急ぐから」
それだけ言い残すと、ライムはこの部屋から悠然と出ていった。
「……」
少しの間をおいてルシェがゆっくりと振り返った。
「さて、あなたにはどう責任を取っていただこうかしら……」
僕の目の前には冷静さを取り戻したルシェがいる。
いや、きっと取り戻してない。怒りが頂点に達して表情がなくなっているような感じだ。
気のせいか先程よりも妖しさというか、美しさが増しているようだ。
(ラ……ラ、ライム! まずいよ、こんなに煽るだけ煽って立ち去ることないだろおおおっ!?)
表情には出さなかったけど、僕の本音はこんな感じだった。
それでもルシェとやりあうしかないんだけど。
僕は再び気合を入れなおすと正面のルシェと向かい合った。
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