「おかしいな」
マルクはどこか違和感を覚えていた。
内部が静かすぎるのだ。
先程の警報音のあと、一時的に宮殿内の敵の数が増えたように感じたのだがすぐに落ち着いてしまった。
その後、自分のほかに侵入者が捕獲されたような感じでもない。
「まあいいか・・・この部屋を調べれば、このフロアには用はない」
彼は自分の中の違和感を置き去りにして、目の前の部屋を透視した。
透視すると魔力を多少消費するが、ドアを開けるリスクを回避できるメリットがある。
その結果、部屋の中には誰もいないという情報が彼の頭の中に拡がった。
「よし、先に進もう・・・」
マルクは周囲を見回すと、慎重かつ迅速に階段を上った。
階段の先は今までのフロアと異なり一本道だった。
周囲のガラスはレンガ調に変わり、壁には永久式のろうそくが均等に並んでいる。
「強敵が近い」
彼の戦いの本能がざわめく。
しばらく歩くと、比較的大きな木の扉が見えてきた。
扉の前には石版があり、魔族の古代文字でこう書かれていた。
「先を急ぐものよ。汝の心を示せ。四つの心に火をともせ。さすれば道は開かれん・・・」
マルクは一瞬ためらった。
四つの心とは何か・・・ここまで来るまでになにもヒントはなかった。
考えれば考えるほど謎だった。
思い返せばここまで随分あっさりと進めてしまったからだ。
(迷っている場合じゃない!先に進もう!!)
マルクは自分に言い聞かせると、思い切って扉を開いた。
扉は意外なほどスムーズに開いた。
きしむ音一つしない。
部屋の中は薄暗かったが、しばらくすると目が慣れてきた。
それほど大きな部屋ではなかったが反対側の位置に入り口と同じような扉がある。
部屋の中心に先程と同じような石版と古びた燭台を4つ見つけた。
「燭台の筒を握り、汝の心を示せ」
石盤にはそう書かれている。
マルクは左端の筒を握った。
その途端、心の中に声が響く。
「汝の忍耐力を示せ。何があってもこの筒を放さぬように・・・」
次の瞬間、筒が真っ赤に染まり熱を帯びてきた!!
手が溶けるほどの高温を感じる!!!
(ぐあああああっ!!)
マルクは思わず筒を放しそうになるが、必死でこらえた。
次の瞬間、筒は真っ青に染まり一気に凍結してしまう。
手が凍えて張り付く・・・急激な温度変化を感じつつ、マルクは必死でこらえた。
彼は直感でこの感覚が幻であることを見抜いていた。
「幻よ、消え去れ!!」
彼が強く念じると、筒は元通りに常温になった。
そして筒の上には緑の小さな炎が・・・
マルクは忍耐の炎を得た!
「あと三つか・・・」
マルクは残りの燭台の筒を順番に握っていった。
筒は彼の心の中の「愛欲」「憎悪」「正義」を試した。
彼は全身全霊で試練に立ち向かった。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
・
全ての筒に火がともると、出口の扉がゆっくりと開いた。
光と共に扉の向こうに人影を感じる!
「これはこれは驚きです。ストレートでこの扉をくぐれるとは思っていませんでしたよ? 少年」
扉の向こうには緑の髪をした淫魔・ルシェがいた。
黒い短いブーツにニーソックスとレオタード・・・扇情的な容貌は変わらず、淫らなオーラが渦巻いている。
しかし以前と違って戦支度を整えているという感じだ。
マルクはルシェの姿よりもその隣にいる人物に驚きを隠せなかった。
ルシェの傍らには・・・連れ去られたはずのリィナが寄り添っていたのだ!!
もどる つづく
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