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(逃げるしかないけど、何か使えないかな・・・)

マルクは無意識に深呼吸をしたせいか、ピンチなのに落ち着きを取り戻しつつあった。


彼が押してしまったものは一種の警報装置のようだ。

マルクは慌てて「そよ風のマント」を羽織りなおすと、建物の二階へと駆け上がった!

階段を駆け抜けながら、もう一つのアイテム「青い指輪」も装備した。

ウィルから授かったこのアイテムの効果は不明であるが、なにやら強い魔力を感じるのだ。


(何があるかわからないから、フル装備でいこう・・・)


マルクは気づいていなかなかったが青い指輪にウィルの魔力が込められていた。

そして指輪をはめた瞬間、マルクの体を極めて薄く青い光が包み込んだ。


ここはもはや敵の本拠地である。

装備を整えたマルクの判断は正しかった。


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「また雨・・・」


ここは女王の間。

窓にあたる小さな音に、皇務を一時中断して窓の外を見る。

青い髪をしたスライムの女王は、急に振り出した雨を憂いに満ちた目で見つめていた。


「・・・雷にならなければ良いけど」


そこへリィナを人間から奪還した緑髪の淫魔・・・腹心の部下、ルシェが現れた。


「失礼します、女王様。たった今、門番・ミウから連絡が入りました。」

ルシェは女王に対して優雅に一礼してから報告を始めた。

女王への報告は一日に数回あるが、今はその時間ではない。


「急ぎの用事ですか? ルシェ。」


「どうやらスライムバスターの弟子が宮殿内に侵入してきたようです。」



女王の問いに間髪いれずにこたえるルシェ。

その言葉は女王の表情をさらに曇らせた。



「!・・・どういうことです?」

「しかし敵はたった一人です。今のところ自由に宮殿内を泳がせています。」


続いて女王は宮殿の警備状況や、侵入者の今後の始末などについてルシェにいくつか質問をした。

また、なぜこの場所をかぎつけたのか。疑問点を全てルシェに問いただした。



「宮殿内の幹部たちには敵の姿を見かけたら見てみぬ振りをするように指示を出しました。

 そして状況報告だけ私に上げさせるようにしております。」


ルシェはよどみなく全ての疑問に答え、女王の不安を取り除く。

スライムの淫界参謀であるルシェの言葉に女王は慎重に頷く。

さらに侵入者の捕獲案についてルシェは女王に進言した。



「女王様、何も心配されることはありません。私は彼をあの部屋に誘い込む考えです。

 彼はおそらくあの部屋から先へは進めません。仮に進んだとしてもその先は・・・ふふっ」


彼女の自信に満ちた言葉に女王は安堵する。

そしてこの件を腹心の部下に一任した。

ルシェは部屋を去る前に、女王にもう一つだけ報告をする。




「別件ですが、リィナの『解毒』が完了いたしました。こちらもご報告まで・・・」


入ってきたときと同じように一礼してからルシェは部屋を出る。

その時、ルシェは女王に見えないように俯きながら邪悪な笑みを浮かべた。

彼女はすでに侵入者を捕獲した後の処刑方法について考えていた。




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