1話  託されたペンダント

韓信、早紀、ドリー軍曹、ケイは、ナッティホング王国に観光で来ていた。
ヨーロッパの小国でありながら、トップレベルの豊かさを誇るナッティホング王国。
一人当たりの国内総生産や国民総所得といった指標は世界屈指であり、経済成長率も高いレベルを維持し続けている。
ナッティホング王国には豊かな鉱物資源があり、鉄鋼業を礎に経済発展を遂げていた。

皆で観光地を歩きながら、ドリー軍曹が言う。
「さあ皆さん、楽しい観光はまだまだ続きますよ。今日はこれからホテルに帰りじゃんじゃん飲んで食べましょう」
ケイが不安そうに言う。
「あのー私、忙しい蝉丸様の代理という事で急にこの旅行に参加する事になったんですけど、何か浮いてませんか?服も仕事から直行でハイパーアタッカーズのユニホームのままなんですけど…」
早紀が答える。
「別にいいんじゃない?気にしないで、旅を楽しみましょう」
この時の早紀はナース姿。何でも近く舞台でナース役を演じるらしく、慣れるためと旅行中、このかっこで通している。
ドリー軍曹も答える。
「浮いてなんかいませんよ。ユニホーム、とても似合ってますよ」
この時のドリー軍曹の服装は、もはや定番、浴衣にリュックに雨傘スタイル。
そんな三人を韓信は微笑みながら見ている。この時の韓信の服装は、飯綱権現の前立ての付いた兜にいつもの鎧。
  
 

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早紀のカバンに潜り込み、この旅について来た涼風(白いカラス)は、今、ナッティホングの上空を気持ちよさそうに飛んでいた。
国境を越え、ガザラナダ共和国に入る。
ガサラナダ共和国は最近クーデターによって誕生した国で、軍事政権が支配している。
涼風が下を見ると、若い女が必死で走っている。
その20メートル程後ろを10人くらいの兵士が追っている。どうやら女は追われているようだ。
木の陰に隠れ兵士達をやり過ごす女。そこに涼風が降り立った。女がビクッとして振り返る。長い黒髪の似合う美しい女だ。
「何だ、カラスか…」
再び、辺りに注意を払う女。
「ドウシタ?」
涼風の問い掛けにギョッとして振り返る女。
「あなた喋れるの?」
女は決意したように、涼風に言った。
「私の名はスカーレット。私はもう逃げられない。どうかこれを心ある人に届けてほしい」
スカーレットは、涼風の首にネックレスを掛けた。
                     
「あそこにいたぞ!」
遠くで兵士の声がする。
スカーレットが叫んだ。
「さあ行って!」
涼風は舞い上がり、その場を飛び去った。下ではスカーレットが兵士達に捕らえられ、どこかに連行されるのが見える。

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ドリセミ一行は、ホテルで飲み会をしていた。酔いを醒ますために、早紀がテラスにたたずむ。
時々吹く風が柔らかく心地よい。そこに涼風がバタバタと飛んで来て手摺りに留まった。
早紀が言った。
「涼風、散歩は終わった?その首に掛けてるのは何?」
涼風「タスケロ、タスケロ」
早紀が韓信を呼ぶ。韓信はすっかりご機嫌で言う。
「もう飲めません」
涼風「タスケロ、タスケロ」
早紀が涼風の首に掛かっているネックレスを外し、韓信に渡した。韓信が調べる。
ネックレスには瑠璃色の石が付いていてロケットになっていた。中を開けるとマイクロチップらしき物が入っている。
「これ何だろう?ドリー軍曹調べてみて下さい」
韓信はドリー軍曹にチップを渡した。ドリー軍曹は片手にワイングラスを持ちながら、パソコンで調べ始めた。
「うーん、どうやらこれはガサラナダの化学兵器の工場の存在を示す情報のようですね」
日頃からご馳走には無縁の不幸な境遇のケイは、一心不乱に食べていたが、話に乗って来た。
「ガサラナダといえば、最近、クーデターによって出来た軍事政権の国じゃないですか?怖いですねー」
韓信が涼風に言う。
「おそらく、この情報を持ち出そうとした者がガサラナダに捕まったんだな。涼風、これを持っていたのは誰だ?」
涼風が答える。
「…スカーレット…オンナ…」
韓信「よーしわかった。今から助けに行くよ」
早紀「面白そうね」
ケイ「行きましょう」
ドリー軍曹「相手は軍事政権ですよ。余計な事に首を突っ込まないほうがいいんじゃないんですか?」
韓信「いい酔い醒ましですよ」
4人は、ガサラナダへと向かった。


※この物語はすべてフィクションであり、登場人物および団体は実在しないものであります。

 

 

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