第1話 新しい仲間

早紀が三人組から抜けた…。
世界中を一人で旅したいそうだ。おそらくもう三人組に戻る事はないだろう。
ひょっとしたら三人組としての戦いの日々に疲れたのかもしれない。
ドリセミ本部に全く顔を出さなくなった韓信を心配して、ドリー軍曹が韓信の事務所にやって来た。
部屋には、寂しそうな顔をした韓信がソファーにぽつんと座っていた。
ドリー軍曹が聞く。
「どうしちゃったんですか?韓信さん。ドリセミ定例会にも顔を出さないで」
韓信が力無く答える。
「別に…」
ドリー軍曹が言う。
「元気出して下さいよ。そうだ、二人で時間旅行でも行きませんか?」
韓信が興味なさそうに答える。
「二人で行ってもつまんないですよ…」
そこにドアを開けて一人の女が入って来た。長い黒髪の美しい顔立ちの女だ。
「韓信、お久しぶり。元気だった?」
韓信が女の方をちらっと見て答えた。
「ああ」
ドリー軍曹が女に聞く。
「私はドリー軍曹。あなたはどなたですか?」
女が答える。
「私はやよい。韓信の友達です」
ドリー軍曹が言う。
「やよいさんですか、いいお名前ですね。韓信さんの友達という事は、刀の腕前は相当なものなんでしょうね」
やよいが答える。
「刀?私、刀なんて生まれてから一度も持った事ないわ。それより、今、面白そうな話してたわね。時間旅行へ行くとか?」
ドリー軍曹が答える。
「そうなんですよ、今、韓信さんを時間旅行に誘ってた所なんですよ。そうだ、やよいさんも行きませんか?」
やよいが韓信に言う。
「面白そうね。行きましょうよ」
やや気持ちが和んだ韓信が答える。
「そう、じゃあ行こうか?」
ドリー軍曹が大喜びで言う。
「行きましょう!そうだ、たまには未来がいいや。100年先の未来。どうなってるかなドリセミ本部。楽しみだなあ」
3日後の3月11日、韓信の事務所に天空僧正が招かれた。
やよいが韓信に聞く。
「未来はどんな世界なのかな?危険とかないのかな?」
韓信が答える。
「きっと未来は平和な世界だと思うよ」
ドリー軍曹が韓信に聞いた。
「韓信さんは、何を着て行きますか?」
韓信が答える。
「私はいつもの鎧を着て行きますけど、ドリー軍曹は普段着でいいんじゃないんですか?」
「普段着か、ではこの戦闘服はいらないな…」
そうつぶやいて、ドリー軍曹は机の上に浴衣を置いた。韓信も刀を机の上に置いた。
天空僧正が言う。
「皆、用意はいいか?…では時空に穴を開けるぞぉー」
天空が経を唱えると、空間に紫色の穴が開く。
「行ってきます!」
三人はそう言って時空の穴に飛び込んだ。その瞬間、大地震が起き、部屋が大きく揺れた。
ゴゴゴゴ…!
天空がひっくり返る。
「ひえ〜!何だこの地震は?…皆…無事でいてくれよ…」

                              ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

三人は時空の穴から地面に放り出された。
韓信「いたたた…みんな、大丈夫か?」
やよい「何とか大丈夫。ここは未来なの?」
ドリー軍曹「何が起こったんだろう?穴を通る途中、激しくシェイクされましたよ」
三人は立ち上がり、きょろきょろと辺りを見回した。
高層ビルが碁盤の目のようにきっちり並ぶ美しい町並み、渋滞など全く感じさせないどこまでもまっすぐな道路、
走っている車は流線型をしている。
予想以上に街には緑が多い。道路の両脇には、街路樹が規則的に並んでいる。
街を歩く人々は、みんな同じ形のブルーのスーツを着ている。
ドリー軍曹が韓信に聞く。
「みんな外人ぽい顔してませんか?」
韓信が答える。
「確かに言われてみれば、そんな気がしますね」
三人がとぼとぼと宛もなく歩いていると、道路の向こう側で警官らしき服装の男が叫んでいる。
「そこの怪しい奴ら、止まれ!」
韓信「何かやばい雰囲気だぞ」
やよい「そうね」
ドリー軍曹「逃げましょう!」
三人がばっと走り出した。十人の警官達がその後を追う。
三人はビルとビルの間の細い通路を必死で逃げるが、前後を警官達に塞がれてしまう。
その時、三人の前にライダースーツの長い髪の女が現れ、叫んだ。
「あんた達、私について来な!」
三人は女の後を追った。
女は古めかしいホテルに逃げ込むとフロントの隅にある大きな花瓶をどかした。
そこには、地下に通じる隠し扉があった。
女が階段を下りて行く。三人もそれに続いた。
四人が地下に消えるとフロントの男が花瓶を元に戻し、扉を隠した。
そこに警官達が叫びながら突っ込んで来た。
「今ここに怪しい三人組が来なかったか?」
フロントの男は静かに答えた。
「いいえ、誰も見かけません」

 

      

右クリックを禁止する