「参加人数が多すぎる。まいったでおじゃるー」
ミマール王は悩んでいた。
この数日間、自分自身の発熱により大会開始を遅らせてしまった。
それ以上に飛び入り参加者が増えたようで、主催者としてはうれしい悲鳴なのだが。
「たしかに今日中には終わりませんな。」
初老の側近が慰めるように声を掛けた。
コポコポコポコポ…
熱いコーヒーがカップに注がれる。
この瞬間だけは王はいつもリラックスできる。
側近が入れるこの一杯はなぜかうまいのだ。
「いっそのこと、年末年始BF大会に名称を改めては?」
「それではいいかげんというか、王としての威厳がっ!ふぎゃっ」
あわててコーヒーカップを置いた拍子で、跳ねたしずくが王の鼻先に直撃した。
忠実なる側近はそうなることを予見したいたかのように、冷たいおしぼりを王に手渡した。
「威厳も大事ですが、選手たちの戦う意思も大事でございますよ」
「そうじゃの・・・」
窓の外をのぞくと、明るい太陽が王に微笑みかけていた。
「それに先ほど前年度の準優勝者ライム殿から連絡がありました。」
「ほう・・・いかなる用件で?」
それからしばらくの間、王と側近は話し合いを続けた。
最後に王はトーナメント表をじっくり見てからポツリと一言…
「ライム殿の相手は彼にしてもらうことにしようかの。」
王の指差した場所を覗き込むイイヨナ。
その先には「ミィ」という選手の名前があった。
次の日。
どーん、どーん、どどーん
湧き上がる歓声と共にミマール王が観衆の前に姿を現した。
ここ3日間ほど流行疾患(淫フルエンザ)に倒れていたということで大会自体も見送られる可能性が強かった。
しかしこうしてみんなの前に顔を出せるまでに回復できたことは、ひとえに彼の絶倫さを物語っていた。
「おじゃる、元気になったんだー」
「よかったですね、リィナさん」
マルクたちもせっかく楽しみにしていたBF選手権がお流れになっては楽しくないと思っていた。
特にリィナは(個人的な理由で)ある女性選手とBFしたくてしょうがなかったのだから、その機会が無くなってしまったのでは面白くもなんともない。
そのほかの選手たちも彼ら同様に安堵の声を漏らしていた。
「開会に当たっての主催者からの挨拶です。」
司会の声にあわせてミマール王がペコリとお辞儀をする。
コホンと咳払いをしてからの第一声、
「えー、みなさんごきげんよう。わし、クリスマスに苦しみますた…なんつって」
往年のオヤジギャグに凍りつく空気。
ピタリと静まり返る観衆。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
数秒の間を空けて、晴れ渡った冬空に祝砲が数回鳴り響いた。
「とにかくお集まりいただいた皆さん、今年もがんばるでおじゃる!」
それだけを言い残してミマール王は退席していった。
淫魔、人間を問わずこの一年間でBF界に影響を与えた戦士たちを集め、頂点を競わせる大会・・・それがクリスマスBF選手権だ。
この開会式が終わればいよいよ本選スタートである。
すでにウォーミングアップを始めようとする選手もちらほらいる。
「第一試合は15分後です。ルールは皆さんにお配りしたルールブックを参照していただきたい」
場内にあるスピーカーから大会進行役からの声が鳴り響いた。
「なんだか慌しい大会みたいですぅ」
「しょうがないよ、これだけの人数だもの」
ブツブツ言う相方をなだめながらマルクは苦笑いして見せた。
リィナとマルクは先刻手渡された冊子をめくってみた。
内容は大まかに言えばこんな感じだ。
・一試合60分一本勝負
・相手に「まいった」を言わせるか、失神させれば勝ち
・男性有利規定。60分後に勝負がつかないときは男性の勝ち
・相手を殺してはダメ
・試合時間厳守
・予選は一日目に3回戦行う。二日目が準々決勝と準決勝。三日目が決勝と特別戦。
「特別戦ってなんだろう?」
ボソっとマルクがつぶやくと、隣にいたきれいな青い髪の女性が教えてくれた。
今大会で特にすばらしいバトルを見せた選手たち8人を集めたオールスターゲームのことらしい。
それを選ぶのはここにいる参加者全員だということ。
「選ばれるだけでも名誉なことだし、莫大な賞金もいただけるの。」
それだけを言ってから、パチンとウィンクをして青い髪の女性は消えていった。
「ミマール王はいろんなお宝を持っているみたいだよ、リィナさん」
「じゃあ、リィナはおじゃーるに『食べても無くならない美味しいお菓子』もーらおっと♪」
・・・そんなもの無いって。
さて、こちらは大会の予選会場に続く通路。
クリスマスBF開催前日に滑り込みで、ある大物淫魔がエントリーしていた。
しかしそのことをしる大会関係者は少ない。
選手にいたってはまったく知らされていない。
そのVIPともいえる淫魔がゆっくりと通路を歩いている。
コツコツコツコツ…
ちょうど反対側、明るいほうから一人の男性騎士が歩いてきた。
彼の目には暗がりに二つの赤く光る点が見えた。
経験から淫魔が歩いてきた、とわかった。
「あら、あなた」
「はい?」
淫魔が声を掛けると男性は振り返った。
目が合った瞬間に背筋に何かが走る。
彼女から特に敵意を感じるわけではないがものすごいプレッシャーを与えられている。
「あなたたち二人で一組なの?」
「えっ?」
まさか見えるのか?……彼は真っ先にその言葉を疑った。
『逃げてっ』
突然、男性騎士の背後から漆黒の翼の少女が現れた!
少女は臨戦態勢だった。
翼を最大限に広げ、無言で彼を守るように大きく両手を開いて女性淫魔の前に立ちふさがった。
「別に何もしないわ。そんな目で見ないで。」
「ルカ!大丈夫だよ。退いて…」
それでもしばらくの間、少女は警戒体勢を崩さなかった。
彼がゆっくりと癒しの呪文を唱えると、少女は闇に溶けていった。
「すみません。気分を悪くさせたでしょう?」
「あなたたち、息の合ったいいコンビね。お名前を聞いてもいいかしら?」
「僕はサコといいます。でも僕と彼女は二人一組ではありません。」
青年はサコと名乗った。
彼自身の強さも相当なものを感じるが、使い間のレベルも尋常じゃない、と女性淫魔は感じた。
「私は・・・・・・フフッ、縁があればまた会えるわ。」
「えっ」
サコの目の前で女性淫魔が消えた!
そして突然背後に足音が聞こえた。
コツコツコツ…
空気の流れもまったく感じないままにサコは淫魔の姿を見失ってしまった!
「……敵としては当たりたくない、な。」
このときの彼は素直にそう感じていた。
もどる つづく
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