「マルクくん、早くいこうよー」
いよいよBF選手権会場に向かう日がやってきた。
リィナはいつもどおり元気いっぱいだ。
しかしマルクは気が重かった。
(生きて帰ってこれるんだよね…僕たち)
昨夜もウィルからいくつかレクチャーを受けはしたが、不安であることには変わりなかった。
年に一度のお祭りとはいえBFである。
しかも人間も淫間も平等に扱われる特殊な空間、BF選手権では何が起こるかわからない。
マルクはいつも以上に気を引き締めて現地に向かう決意だ。
二人は招待状に記された場所へと足を運んだ。
神官たちに挨拶をしながら転職の神殿の裏道をゆっくりと歩く。
普段は何もない道路だが、今日は二人のためにBF選手権会場へのゲートが開かれていた。
「リィナさまとマルクさまですか?」
衛兵の姿をしたゲートキーパーが語りかけてきた。
二人は無言でうなづいた。
「お待ちしておりました。ささ、こちらへ」
一見、無骨な衛兵のようだがとても礼儀正しい。
マルクたちは言われたとおりに複雑な呪文が書かれた星型の陣の中に入る。
ゲートの魔力によって二人は亜空間へと飛ばされていった。
足元に大地の感触がよみがえる。
マルクたちは無事にゲートの先にたどり着いた。
「太陽がまぶしいね」
たどり着いた先は南国風の気持ちのよい草原だった。
海が近いのだろうか、波の音も聞こえる。
空間転移が始まったときと同じように二人は魔法陣の中にいた。
いや、性格にはゲートキーパーを含む三人だが。
「わぁ、キレイなお城ー!!」
リィナの目の前には壮麗な城と城壁が見えた。
言葉に反応してマルクもリィナの視線を追う。
これが主催者であるミマール氏の居城なのか。
「大きいお城だね、マルクくん!!」
「ほんとですね〜。いったいどれだけの人たちが暮らしているのだろう?」
レンガ造りの城壁に囲まれた真っ白な建物。
真っ赤な装飾が施された尖塔がいくつか見える。
遠目にも入り口に衛兵がいるのがわかる。
「よくぞ参られた!でおじゃる!!」
声のするほうに目をやると、いかにも王様といった衣装に身を包んだ人物が立っていた。
ゲートキーパー氏が膝を屈して礼をとっている。
(おお、この方がきっとミマール氏に違いない。)
マルクはぺこりと頭を下げた。その脇をリィナが駆け抜けていった。
「私はミマール。BF選手権の…」
「おじゃる、おじゃる〜!このひげは本物ですかぁ?」
リィナは初めて見る王様ルックの人物に興味津々のようだ。
「ぬひゃひゃ、くすぐったい!本物ですよ、おじょうさん。」
「ふみゅー」
近づいてきたリィナを軽く抱擁するミマール氏。
抱きつきながらも白いひげを触り続けるリィナ。
(こ、声が変わったような?)
とりあえず彼がミマール氏であることに間違いはないようだ。
リィナとの抱擁を終えたあと、ミマール氏はゲートキーパーを伴ってマルクたちを城壁の中へ案内した。
「とにかくよく来てくださった。感謝します。」
いきなり晩餐会でも開けそうな大きなテーブルにマルクとリィナは座っていた。
ミマール氏の横にはゲートキーパー氏と女の子が一人、それとリィナと同じくらいの背丈の少年兵が直立不動で控えていた。
「昨年度のお話は聞かれましたかな?」
出された紅茶をすすりながら二人はミマール氏の話に首を縦に振った。
「ウィル殿たちのおかげで大変盛り上がりました。なにせ開始前までは圧倒的に一番人気の女性がおりましてね」
きっと優勝したメイドさんのことだ、とマルクは直感的に理解した。
紅茶が出てくるまでの間にいろいろなことがわかった。
ここはいわゆる公営賭博場のような場所で、世界中のVIPがお金を出し合って対戦者にお金を掛けることができる。
BFに不正がないように対戦するもの達が誰なのかは当日まで不明。
そんな中、昨年は呼び寄せた淫魔のうちの一人が大変に強力で賭けが成立しない状況だったらしい。
「やはり戦いが一方的だと興ざめですな。」
ニコニコしながら話を続けるミマール氏。
今年もウィルとライムを呼ぶつもりだったが、ハンター協会からはマルクとリィナを薦められたらしい。
二人の活躍に期待しますよ、と前置きをしてから彼は続けた。
「さて、試合はトーナメント制なので、参加者の対戦相手を公平に決めねばなりません。そのためにお二人には抽選のかわりに簡単なBFテストを受けていただきます。」
ミマール氏が手を上げると、後ろで控えていた女の子がすばやく一歩前に出た。
「マルク殿のお相手はこの城の守備隊からリリリン副隊長。」
ミマール氏に紹介された女の子はリリリンというらしい。
マルクのほうを向いてペコリとおじぎをした。
ポニーテールにした黒髪がふわりと揺れた。
年齢は17歳くらいに見える。それでいて副隊長というのは驚きである。
大きな黒目とまだ幼さを残した顔立ちがとても可愛らしい。
グラマラスというよりはすらっとした体型なので、マルクにとってかなり好みの女性かもしれない。
「ひぎゃっ!」
激痛を感じたマルクが小さくうめいた。
マルクの鼻の下が一瞬伸びたことを察知したリィナは、思いっきり彼の足を踏みつけた。
「なにかあったのぉ? マ・ル・ク・く・ん」
「い、いいえ。なんでもないけど…足をどけてくれないかな」
テーブルの下で何が起こっているかを知らないミマール氏がさらに話しを続ける。
「リィナ殿にはこちらにいる新人兵卒ショウタロを」
「きゃーん、カワイイ!!…んみゅっ!!」
今度はマルクの人差し指がリィナのわき腹に突き刺さった。
もどる つづく
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