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ライムの夏休み



それからかなりの時間が経過した。

ライムの秘所に隠されていた宝珠は度重なる力の放出により小さくなっていた。
逆にピノとシャルは宝珠から拡散する力を体内に取り込んで数時間前とは別人のような力を得ていた。

「ライム様、あと何回持つのかしらね?」

再びピノが舌先をペロリと伸ばしている。




(も、もう…気持ちよすぎてダメ…)

もはやライムは意識がなくなりかけていた。
宝珠が力を拡散するときにライムの肉体にも過度の負担がかかる。
しかも困ったことに淫魔の肉体は痛みを快感に変換する。

「ライム様、もう少しで昇天ですわね。」

自分の番を待つシャルが微笑みかける。
かつての上官であるレベッカの姿がシャルに重なる。

(レベッカさま…これで許してもらえますか…?)

快感に打ち震える肉体とは裏腹に、ライムは亡きレベッカのことを冷静に思い出していた。
はぐれ淫魔だった自分を他の仲魔と差別なく接してくれたレベッカ。
その腹心の部下たちが自分を狩りに来た。
彼女たちの行為自体にレベッカへの愛情を感じたのでわざと負けてやることにした。
自分の中に隠されている「炎のエレメント」の精霊力を彼女たちに分け与えれば少しは罪滅ぼしになるだろうか。
自分はこのまま死んでしまうかもしれないけど、それでもいいとライムはおもっていた。

(で、でも…もう一度だけ…ああぁ・・・)

快感にさらされ、意識が薄れながら死を覚悟したいまでさえ、心残りはある。
ライムの心に中に一緒に暮らす男の顔が浮かんだ。
快感にさらされながらも無意識で口元が動いた。

「ん…なんですか?」

ライムからあえぎ声以外のものが発せられたので、ピノは責めを中断した。
シャルもつられてライムの表情を覗き込む。

「もはや命乞いなど受け付けま・・・あああっ、ひあっ!!あついいいい!!!!!」

突然シャルの首筋がむんずと掴まれた。
首筋にまるで溶けた鉄パイプが絡みついたかのように熱い。
二人の淫魔はこのときになって初めて背後にいる男に気づいた。

青いオーラを放つ男の手からシャルの首筋に流れ込む熱。
いや、正確には冷気。
過ぎたる冷気は相手に熱気と同じ感覚を与える。

しかも二人の淫魔は気づいていなかった。
「炎のエレメント」の効果で体の属性が火に変化してしまったことに。
未だその力を操りきれない二人にとっての天敵が音もなく背後に忍び寄っていたのだ。

「まったく」

男は野良猫を払いのけるかのようにシャルの首筋を掴んで横に放り投げた。
近くに転がったあとも悶絶しているシャルをみて、ピノはライムからすばやく距離をとった。
3mほど下がったところで足が動かなくなった。体が言うことを利かない!
あまりの驚きで足が震え、声も出ないピノをを無視して男は言った。

「帰りが遅いから何をしているかと思えば…」

ライムの目にもはっきりと映る見慣れた影。
思えばこの男もレベッカと同じくらいライムに愛情を注いでくれている。

「お、おまえがあの…あのっ!!」

ピノはまだうまくしゃべれないようだが、目の前の男が誰だかわかったようだ。

「はぁっ、はぁっ…やっぱり来てくれたんだぁ……」

「僕の前から勝手に消えるなんて許さないぞ、ライム」

安堵と迷いが入り混じった泣きそうな彼女の顔を見た男、
スライムバスター・ウィルはいつものように優しく微笑んだ。







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