午後二時を過ぎたころから俺の身体もだいぶ回復してきた。
昨夜の淫らな行為をフラッシュバックすることもなく、ダルさも抜けてきた。
5時間目に入ったところでケータイに着信あり。
柚子からのメールだった。
「今日の夜までにカバンの中の本を読んでおいてね、アニキ」 とのこと。
今日の夜まであと数時間しかないけど…今から宿題ですか?
そんなことよりも、あいつ…俺のカバンに何か詰め込みやがったのか。
道理でいつもより重たいと感じたわけだ。
先生や周りのやつらにバレないようにカバンを漁ってみる。
内ポケットの中に似つかわしくない本が一冊あった。
そ〜〜〜っと取り出してみる。
(なんだこりゃあああ!)
一目だけ表紙を見て、また俺は本をカバンの中に戻した。
カバンの中にあったのはA4番サイズの雑誌。
そこには麦藁帽をかぶった美人モデルがふたり、腕を組んで手を振っている。
思いっきり女の子の読む本だ。
柚子のヤツ、これをいつどこで読めと言うのだ!?
俺が読んでいるところを仲間に見られたら、
どんないいわけをしても変態扱い確定。
これは教室では開けない!!
とにかく授業が終わるまでは開けられないことだけはわかった。
―― そして放課後 ――
人目をはばかるように俺はテニスコートの裏の木陰にやってきた。
ベンチがあるけど、ここはなぜか人がいつもいない。
授業をサボるには絶好のスポットだった。
「いったいどんなつもりでこんな本を……お…?」
木陰に隠れてヤツから借りた本をパラパラとめくってみる。
また『月刊エムティーン 8月号』か。
あいつもこれ好きだな…
この『M』って、ミドルティーンって意味だよね。
どうでもいいけど。
肝心の中身はというと、はじめのほうはファッション系の写真中心だった。
だが真ん中あたりをすぎた頃から記事の内容がガラッ変わってくる。
緊急特集! 『この夏は彼氏に F してあげよう!』
これ、中高生の雑誌だよね?
それがなんということだ…フェラチオ特集かよ!!
パラパラ…
「フェラの効果的なポイントって…うわ……スゲ」
男性をその気にさせるアプローチの仕方から、実践編までイラストつきで丁寧に解説してある。
女の子の雑誌なんて昨日まで見たことなかったけど、ある意味男性誌よりも過激だ。
これじゃあ同世代の男子なんて子ども扱いされても仕方ない。
雑誌の特集ページには、たっぷり焦らしてからジワジワと先端をくわえ込んでいく女の子のイラストがあった。
口元に唾液を溜めて、ペニスにとろりと垂らすシーンとか卑猥すぎる!
そのマンガが俺の目から見ても、かなりエロい。
「ぬうっ! こ、こんなに激しく首を動かされたらヤバいな…」
昨日の行為を思い出して、思わず前かがみになる。
ゆずのやつめ…俺に隠れてこんな雑誌を読んでいたとはけしからん。
その時、遠くから何かがこちらに向かってくる音が聞こえた。
ガンッ
「ぐわおっ!!?」
ゆずに借りた(エロ)本にのめりこもうとしたとき、俺の右側頭部に激痛が走った。
あざやかなレモン色のボールが足元を転がっていく。
どうやら飛んできたテニスボールが直撃したようだ。
「やだっ、木の陰に誰かいたみたい!?」
遠くで聞こえたのは女の子の声。
頭を押さえ込んでうめく俺に気付いたボールの主が近づいてくる。
「すみませーん!」
元気よく謝られても痛みはとれない。
一秒ごとに右目のあたりがズキズキする。
だめだ、俺…このまま死んじゃうかも。
今朝のU字溝のつまずきといい、今日はついてない。
またもやさっさと諦めた俺に向かって、テニス部っぽい女子が駆け寄ってくる。
遠目にもわかるほどスラリとした脚が近づいてくる。
「あれは、いい脚…!」
直感的にそう思うほどの美脚。
膝から下も長くて、ふともものラインもいい。
肌も無意味に真っ白ではなく、うっすらと健康的に焼けているのがいい。
うちの学校にあんな子がまだいたのか。
せめて死ぬ前にそのミニスカートの中を見なければ
「あっ、ゆずのお兄さん!」
「えっ?」
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