ヨロヨロしながら、なんとか布団から立ち上がった俺は二階から降りていった。
リビングには一足先に朝食を食べ始めた妹・柚子がいた。
「兄貴さぁ…毎朝いい加減にしてよね、ホント」
こっちをジト目で見ながら、焼きたてのトーストをパリパリ言わせながら旨そうにたべてる。
それにしてもあの電気アンマは酷い。
女のお前にはわからない痛みだろうけど、癖になったらどうすんだ。
ブツブツ言ってる俺をジロリと睨みつける妹。
「あのね、兄貴! あたしにも準備はあるの! アンタの世話ばかり焼いてるほどヒマしてないのっ」
「準備ってなんだよ」
「学校に行く前に女を磨くのよ!」
学校の先生にばれないモテカワメイクとやらが流行らしい。
色気づいたところでこいつの性格では化粧も無駄なような気が
「なんか……今すごく失礼なこと考えてなかった?」
「い、いや…」
「文句があるなら早く彼女でも作ってさ、あたしの代わりに起こしてもらえば?」
柚子は急に両手を胸の前で組んだ。
「朝になると 『おはよう、そろそろ起きて♪』 な〜んてメールが来ちゃって」
静かに目を閉じて何かを妄想している。
乙女モードに入った柚子はしばらくの間、うっとりした様子だったが…
「はあー、ウザッ」
すぐに現実に戻り、ガチャガチャと自分の食器を片付け始めた。
「ごちそうさま! あたし先に行くからね、兄貴」
「お、おう」
妹はカバンをもって家を出て行った。
やっと口うるさいのが目の前から消えてくれる、と思って悠々と新聞を広げる。
その瞬間、玄関がバーンと開いてヤツが戻って来やがった!
「ちょっと! なにくつろいでるのよ!!」
「きょうの天気をだな…」
「あのね! 兄貴が遅刻したらあたしがママに叱られるんだからねっ」
「スンマセン…」
ビシッと指さして俺を牽制しながら、今度こそ妹は消え去った。
仕方ない。学校に行く準備でもするかな。
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