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勝者と敗者




勇悟が目を覚ますと白い天井が視界に飛び込んできた。
その光景に自分があさぎにKOされ医務室に運び込まれたと言う事を理解した。
「目を覚ましたね、勇悟。大丈夫?」
ゆっくりと身体を起こす勇悟にあさぎは声をかける。
試合後、あさぎは勇悟が医務室に運び込まれてからずっと付きっきりだった。
あさぎの声を聞き、その姿を目にした勇悟は悔しさのあまりに涙を浮かべる。
そんな勇悟の頭をあさぎは優しく抱きしめると勇悟は子供の様に泣き始めた。
その頭を無言で優しくなでるあさぎと悔しくてひたすら泣きじゃくる勇悟。

勇悟の胸の内は様々な思いで渦を巻いていた
格闘家として憧れていたあさぎがはるか遠くに居た事実、それが判った瞬間に
あさぎを女としてみてしまった自分の卑小さ、そんな自分に優しく接してくれ
るあさぎへの再罪感。
「大丈夫。またやり直せば良いんだよ、勇悟」
なかなか泣きやまない勇悟の顔を上げ、あさぎは勇悟の目を見つめながら勇悟
の涙を拭い優しく言葉をかける。
あさぎの視線を受け止めた勇悟は無言で頷きあさぎの胸に顔を埋める。
それは格闘家としても人としても器の大きいあさぎに対し庇護を求める勇悟の
心の表れだった。
「全く……顔だけじゃなくて頭の中も子供みたいだね」
勇悟の心を見透かしたあさぎは再び勇悟を優しく抱きしめる。
「どうせ俺は子供ですよ」
勇悟は顔を上げると他の者が言ったならば激昂する言葉に拗ねて応えると再び
あさぎの胸に顔を埋めた。
自分を守ってくれる存在に包まれている安心感と試合の疲れで勇悟はそのまま
寝息を立て始めた。


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おしまい
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