<2>
彼女の名前は【愛穂】(まなほ)。
最初の出会いから随分と時間が経った。
その間、僕らの環境は大きく変わった。
愛穂と出会ったころ。
僕はまだ、自由だった。
窓から差し込む朝日を浴びながら、僕はレモンティーに口をつける。
「どう?5種類比べてみたんだけど、それが一番よかったみたいよ。」
「飲んでほっとするね。香りのせいかな。あまり強くない感じ。」
「そう。強ければいいってわけでもないの。」
「愛穂ちゃんの匂いも、最近弱くしてるでしょ。」
「だってそのほうが顔を近づけてくれるから。新たな発見よ?」
彼女はにっこりと微笑んだ。
ずっとずっと一緒に暮らしているのに、愛穂のことが愛しくて仕方ない。
笑顔を見るたびに、胸が苦しくなる。
心臓が破れそうなほど鼓動を打つ。
僕はときおり、己の正気さを疑ってしまう。
敵をこんなに好きになってしまうなんて。
あの醜い化け物をこんなに愛してしまうなんて。
温かいレモンティーが喉に流れ込む。
いつからだろう、敵意が愛情に変わってしまったのは。
そして、この問いかけは何回目なのだろう。
この問いのたびに僕は記憶の糸をたぐりよせる。
思い出すのは、戦いの記憶。
彼女の征服されるまでの過程。
そして、屈したくて屈してしまった僕の弱さ。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
駅前広場に駆けつけ、唖然とする。
時すでに遅く、仲間たちがサッキュバスたちに襲われていた。
僕ら、この町の平和を守る『ジャスティス・レンジャー団』。
略して『JR団』。
一応言っておくが、国鉄から民営化した企業とは何の関係もない。
JR団は5人。
カーマイン、ブルー、イエロー、ブラック、グレー。
僕はカーマイン。一応、リーダーということになっている。
残りの4人は、散り散りになってサッキュバスの精を吸われていた。
あちらこちらで全裸になって犯されている。
「あ♪あ♪あっ♪い、イイっ!」
目の前のベンチでは、イエローがサッキュバスの餌食になっている。
不気味な化け物にのしかかられて喘いでいる。
第三者的に見て、こんなに気味の悪いものはない。
サッキュバスは人間とは似ても似つかない怪物だ。
全身、赤茶けた色のひび割れた肌に覆われている。
背中には伸縮可能なコウモリの翼。
顔には目がなく、鼻と口がある。
口はだらりと開いて裂けたように大きく、ときおり、歯や舌が垣間見える。
メスしか存在せず、人間の男から精液を奪って食糧にしたり、子種に使っ
たりする。
忌まわしい尻尾が、楽しそうに揺れている。
こいつらの厄介なところは、魔法を使ってくること。
美しい女性に化けたり、いやらしい夢を見せたりして、性的に男を
惑わす力をもっているのだ。
この力の前では、たいていの人間はサッキュバスに屈し永遠の虜となっ
てしまう。
JR団の4人もそうなりかけている。
今、この場面がまさにそうなのだ。
一月前、突然この町にサッキュバスの群れが現れた。
僕らJR団はすぐさま退治に乗り出したのだが、簡単に倒せる相手ではなか
った。
僕らが手を焼いている間に、サッキュバスは対JR団用の戦闘班を作り上げ
たのだ。
その名も『チームJK』。
このチームは、フレイム、ウォーター、ウィンド、アース、ビューティー
の5体のサッキュバスから構成されている。
当然、可愛い女の子に化けて、僕ら一人ひとりに迫ってきた。
色仕掛けで各個撃破しようというのだ。
JR団のメンバーは次々と誘惑に負けていき、チームJKに心を奪われてしまった。
雑魚サッキュバスたちの狼藉を止めるためにこうやって出動しても、JKが出てくると言いなりになって、戦闘を止めてしまう始末だ。
「イ、いひぃ、イクッ!いっちゃうよ!若菜ちゃん!」
目の前でイエローが切羽詰った声をあげた。
若菜とは、サッキュバス【アース】が人間に化けたときの名前だ。
長くて黒い髪が艶っぽい女の子で、イエローの理想の娘に化けている。
素っ裸になっているイエローは、アースの騎乗位でイかされそうになって
いる。
サッキュバスの幻覚攻撃で、若菜と性交している気になっているのだろう。
甘い声を漏らしながら優しく腰を揺らすアース。
醜くひび割れた肌の化け物が、イエローには最高の美少女に見えているのだ。
少し大きめのアースの乳房を両手で掴みながら、イエローは絶頂をのぼりつ
める。
「若菜っ、若菜ちゃんっ、イクっ!もう、イクよっ!」
「うん、きて。マサヤ君の精液、若菜の子宮にいっぱい注いで♪赤ちゃんで
きるまで、いっぱい、いっぱい精子注いでほしいのっ♪」
アースは前傾姿勢になって、イエローことタカイ・マサヤの体に覆いかぶさる。
異形の生き物は口を少し開く。
そこから這い出てきたのは、蛇のように長い舌。
それをのばして、マサヤの口の押し込む。
化け物とディープキスを楽しむマサヤの表情は、恍惚そのものだ。
まるで地上の楽園で、この世の春を楽しむかのよう。
「ワカっ・・なっ・・ううっ!!・・・ああっ・・・」
マサヤは苦しそうに呻き、腰の動きを止める。
と、アースが天を仰いでびくっと震える。
精液がアースの子宮に流し込まれたのだろう。
「あはぁっ♪いいぃっ♪マサヤ君の精子もっとぉ♪若菜の卵、マサヤ君の精子で受精させてほしいのぉ♪」
イったばかりだというのに、二人はお互いに腰を動かし始める。
淫らな愛情がつむぐ甘美な快楽に夢中になって、僕の気配に気づいていない。
マサヤはサッキュバスに犯してほしいかのように、彼女の肩に手を回した。
「二人とも!いい加減にするんだ!」
僕はそばで叫ぶ。
すると、アースは慌てて上半身を起こした。
イエローに跨り膣内にペニスを収めたまま。
振り返って、目のない顔で僕をにらみつけた。
「乙女の恋路を邪魔するやつは、地獄に落ちるよ!」
「よく言うぜ。自分の顔を鏡で見てからいうことだな。」
「ふん、おまえよりはましさ。」
「なにをっ!そこをどけ!マサヤから離れるんだ!」
「誰が離れるもんか。あたしはこの人とずっと一緒にいるんだ。そう二人で決
めたんだから。」
サッキュバスの一族は、特定の男から続けて精を吸うことで、その男が好きになる。
そして、その男を独占しようとするのだ。
結果として、サッキュバスに好かれた男はペットか愛奴隷にされてしまうのだ。
冗談じゃない。
こんな化け物に飼われるなんて!
ふと、後ろに気配を感じた。
振り返ると、すぐそばに女の子が立っている。
「あはっ♪残念、見つかっちゃった。カーマイン!あなたの相手はあたしよっ!」
「卑怯者めっ!」
僕を背後から攻撃しようとしたのは、サッキュバス【ビューティー】だ。
こいつにはまだ、JR団の彼氏がいない。
こいつが狙っているのは僕なんだ。
他のサッキュバスが正体を丸出しにしているのに、ビューティーは美少女の姿
に化けたまま。
その理由は簡単だ。
そのかわいらしい姿を僕に見せるためなのだ。
脚が丸見えのマイクロミニスカートと、セーラー服を模した戦闘コスチューム。
彼女は僕の好みの姿に化けている。
化けているとは分かっていても、僕が受ける心理的影響は計り知れない。
腰まで伸びた美しい金色の髪と、人懐っこそうな優しい顔立ちが、僕の心臓をわしづかみにする。
「ビューティー、君とは戦いたくない。」
余裕の笑みを浮かべて腰に手をあてる彼女。
その体つきに、しばし僕の目は釘付けになってしまう。
胸のふくよかなふくらみといい、脚の健康そうな肉付きといい。
「そう?じゃあ、こうして待ってようか?仲間たちが精を搾られるのを見ながら、ゆっくりと♪」
「だめだ、止めさせるんだ。」
「もう!意味不明なこといわないでよぅ。」
「このままじゃ、皆仲間がやられてしまう!」
「手遅れよぉ。もう存分にヤられちゃってるじゃない。性的な意味で。」
「いや、まだ手遅れなんかじゃない。僕は諦めないぞ!」
「だーめ。あたしの仲間の邪魔はさせないわよ。いくわよ!ビューティー・セダクティブ・バインドっ!!」
ビューティーが僕を指差して必殺技の名前を叫ぶ。
すると・・・
途端に彼女の髪が伸び、まるで金色の洪水のようになって僕に向かってくる!
左に飛びのいてかわすが、髪の毛はUターンして僕を手足にまとわりつく!
「うあっ!?」
手足だけじゃない。
あっという間に、僕の全身がビューティーの髪で覆われてしまう。
僕は顔だけ出して、ビューティーの髪で出来た繭の中に閉じ込められてしまった。
立った姿勢のまま、僕はずりずりとビューティーの目の前に引っ張られる。
しかも、もぞもぞと髪の毛が動いて僕の体を撫で回す。
髪の匂いと相まって、僕の胸はますます高鳴る!
「どう?いいでしょ?この技。ちょっと興奮するよね?」
「ぅぅっ、なんだかすごくいい匂いがする・・・」
「いっぱい吸っていいからね?」
言われなくても、いやでも鼻腔に入り込んでくる。
甘酸っぱい、頭がくらくらしそうなほど濃い匂い。
だんだん理性が痺れていく。
ビューティーのふっくらした胸、むっちりした脚腰に触りたい。
股間からは、早くも我慢汁が漏れてしまう。
金色の繭の内側で、波打つように激しく髪が動く。
「あうっ!?」
僕の一番大事なところを、ビューティーの髪が触る。
「あっ、ごめんね急に触って。でも、すごく濡れてるよ?」
続いて、背中や胸の肌をさわさわと淫魔の髪が愛撫してくる。
「どお?こうやって触られると、力が抜けちゃうでしょ?」
僕は、この繭の中で素っ裸にされてしまったのだ!
「くぅ・・・」
「恥ずかしい?えへへへ、もっともっと恥ずかしいことしてあげる。」
ビューティーの頬が朱に染まってきた。
「どんな風に責めてほしい?リクエストとかある?」
変に刺激するのは危険だ。
僕は慎重に言葉を選んで懇願する。
「ねえ、離してよ。」
「ダーメ!こんな可愛い子の髪に包まれて、幸せだと思わないの?」
「そりゃ光栄だけど、仲間を助けなきゃないんだよ。」
「そんなこと、忘れるほどよくしてあげる。」
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