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「少し遅れちゃったな……まずい」

土曜日の午後、僕は少し焦っていた。
今日は午後からお休みの舞ちゃんとデートする予定だ。
僕自身も土曜日は休みなので、カノジョに時間をあわせる形での待ち合わせ。

待ち合わせ場所は彼女の勤める老舗の人形屋「空月」付近のコーヒーショップだった。
慌てながらも店のドアをくぐると、まだ舞ちゃんの姿はなかった。
店の人に聞いてもまだ来ていないという。

(おかしいな……約束の時間に遅れる娘じゃないんだけどな)

きっとお店が忙しいのかもしれない。
クリスマスも近いし。
そう思った僕は、しばらく店の外で時間を潰すことにした。

「ん……?」

ポケットの中でケータイが震えた。
メールの着信あり。
舞ちゃんからだ。

『おにいちゃん、ごめん! お店のお使いでまだ外にいるの。あと一時間くらいかかっちゃうの! ホントにごめんなさい……』

慌てた舞ちゃんの様子が目に浮かぶようなメールだった。

あわてないでゆっくりおいで……と、僕は返信した。


「せっかくだから、たまには人形でも見るか」

僕は珍しく自分から人形の「空月」に入っていった。
今更だけど、「にんぎょうのくうげつ」と読むんだよ?





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