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その夜遅くに僕は家に着いた。

レベルが上がったせいか、いつもより足どりが早くなった気がする。


装備をはずしてベッドに転がる。 さすがに眠いや……zzz

「お兄ちゃ〜ん、ありがとう!!」


夢の中でルルが笑っている。

その隣にはミリアがいる。


そっか……僕の意識の中で二人はまだ生きつづけているんだ、と理解した。


今度はミリアが僕に御礼を言う。


「ありがとう、ウィル。あなたのおかげでルルと一緒にいられるわ」


本当に二人ともうれしそうだ。


僕はある意味、ルルとの約束を果たせたことになるのだろうか。


少し照れている僕を見ながら、ルルもペコリと頭を下げた。


「それでね、お兄ちゃん。大事な話があるから伝えるねっ」

ルルはちょっとまじめな顔をして、それからしゃべりだした。



「うん? なんだぃ? ルル」


「私とママが協力すれば、少しだけ先の未来が見える技が使えるんだよ!

 この能力をお兄ちゃんにあげる。それが私たちからお兄ちゃんへのお礼なの。 でもこれってチョットすごくない?」


つまり先読みができるってことだろ……そりゃすごいよ、ルル!


未来がわかるのなら、バトルでも相手の動きを封じ込めるのもたやすい。 


今度はミリアからの説明。


「この子の説明の補足ですけど、未来といっても『現在の自分を維持した場合』の未来ですから……自分のみに起こりうる事しかわからないの」


そうか……自分限定の未来なのね。

宝くじの当選番号とかはわからないわけだ。


ちょっとだけ残念かも。ところで……


「どうやってみるの? 自分が見たいときにその力が使えたらありがたいんだけど……」


今度はミリアとルルのふたりが顔を見合わせる。


そして、困ったわねという顔でミリアが話す。


「今のあなたでは意識的に未来を先読みすることは無理ね。私たちが力を貸せるのは寝ている間だけ。

 だから、この空間で……『夢』という形で未来を見ることができるわ。とりあえず今夜、この能力を体験してみて」

ルルとミリアが手をつないで複雑な呪文を詠唱する。


「じゃあ、お兄ちゃんいくよ〜〜〜〜〜」



僕の意識は光に包まれ、そして深い眠りに誘われていった………………



***************************


僕は宮殿の真中あたりにたどりついた。

月の光がまぶしい。


目指す場所はもう少し先だが、僕の直感がこの部屋に敵がいることを告げている。


一瞬たりとも隙を見せてはいけない……そう思いつつ先を急ぐ。



「おめでとう。一人前のスライムバスターになれたのね」


あたり一面に響きわたるクールな声。

そして聞き覚えのある声の主に、僕は振り返る。


切れ長の目、男を狂わせる美脚、程よい大きさのバスト、自信にあふれた勝気な微笑み……

振り向いた先には、リップスでありながら得意技の舌責めもせずに僕を足コキだけで射精寸前に追い詰めたライムの姿があった。





今日は真っ黒でタイトな服を着ていた。

上半身はタンクトップで肩から指先までは露出している。


そして相変わらずの美脚を際立たせるミニスカート。


あのしなやかな足先で、いいようにいたぶられたのを今でもはっきりと思い出せる。


今日はあの時と違って、唇が美しく艶やかにぬれているのが印象的だ。


「あ〜あ、やっぱりここまできちゃったか……私があの時感じた予感は正しかったみたいね」


以前のような様子見の、余裕のある笑顔じゃない。


ここまでたどり着く間の敵を倒したということで、僕の実力を認めざるを得ない……といったところか。


「そして、あのときの予感が私たちにとって脅威となった。

 もう手加減はできないわ、ウィル。今度は本気で相手してあげる」


以前と同じようにゆったりと近づいてくる。


今ならわかる……ライムの周りには男を欲情させるオーラが渦巻いていることと、

僕を足責めしたあの時のライムが全力ではなかったことを。



「ライムからのリベンジは、僕も望むところだ。 いくぞ!」

でも僕だってあの時よりもレベルアップしてるんだ。

ライムの強さに近づいたはずだ。


「そんなこといって……うふふ、本当は私にまたいじめられたいんでしょう?

 あなたの体には私が足先責めの快感を刻み込んだのだから……」


チラリ、とミニスカートの裾をめくるライム。


思わず彼女の足に目がいってしまう。


確かに彼女の言うように、一度刷り込まれた快感は簡単には消えない。


バトルの前から僕はハンディキャップを背負っている状態だ。


「さっきも言ったけど、私は本気よ。あなたがどんなに鳴いてもわめいても、全部吸い尽くしてあげる」

邪悪な笑みを浮かべるライム。

でもだいじょうぶだ、今度はライムが技を仕掛けてくる前に、こっちが先制攻撃してやる。



僕の闘志に反応して、スライムの指輪がキラリと光を放つ。


「あら、いいものを手に入れたようね。でも、それに頼っているようじゃ私の敵じゃないわ」


ライムの言葉を無視して、僕はすばやく彼女に近づく。


右手を伸ばして彼女の腕をつかむ……と見せかけてすばやく彼女の背後に回った。


そして彼女を後ろから抱きしめてのキス。

前回は彼女からのキスで主導権を握られたから、今回はその逆をいってやる。


「あん、久々の再会なんだからやさしくしてよね……」


色っぽいライムの声を聞きながら、僕はライムの口の中に舌を伸ばした。ヌルリ……


だいじょうぶだ、以前のようにいきなり恍惚状態になることもない。


「ん……んふぅ……」

目を細め、息を荒げるライムの様子を見て僕は彼女に対するキスをさらに加速させる。


「上達したわね……あぁ……♪」

ライムの目じりがとろ〜んと緩んでいる。


今度は彼女の正面に回りこみ、恋人にするかのような情熱的なキスを何回もする。


彼女の両手をしっかり拘束することも忘れない。


指先を絡めあいながら、さらに熱くキスをする。


僕のキスに震えるライムの唇は魅力的だった。


適度な弾力と吸い付くような感触を兼ね備えたリップスの唇に、僕は夢中になって唇を重ねた。


また、ライムがこの刺激に慣れないように舌を不規則に差し込み、相手の呼吸を乱すように彼女の舌をしゃぶり尽くす。


今のところ彼女からの反撃はない。

素直に感じてくれているように見える…………



どれくらいキスをしただろう。


あいかわらずライムは可愛く喘ぎつづけているが、本当に感じているのかどうかの不安が僕の頭をよぎる。


僕の頭の中で一瞬のためらいが生まれたのを彼女は見逃さなかった。


「んふっ♪ んん〜〜〜」


チュパ、と彼女の唇がはじめてうごめく。

ライムの唇が、僕の下唇と上唇を丁寧にかみ分ける。


僕の腰の辺りで落ち着いていた彼女の腕が、僕の頭の後ろに回る。


彼女の細い指が僕の顔をサラサラとなでまわす。


気持ちいい……僕の舌の動きがだんだんと鈍くなる。


しばらくして僕の舌の動きと彼女の舌の運動量が逆転するころ、ライムの顔には余裕の表情が浮かんでいた。


すぅっと僕の顔から離れるライム。

名残惜しそうに彼女の唇を求めてしまう僕。


僕の彼女に対する拘束は、完全に無効化していた。


「あなたの攻撃は、もうおしまいみたいね。 そろそろ私から責めていいのかしら?」


ば、ばかな!!全然効いてない!?


そんなはずはない、あの時の感じ方は嘘じゃなかったはずだ。


脱力感に襲われる僕の心境を見透かしたように、ライムが話す。


「あなたのキスはとても熱いの。すごく素敵よ。

 でも、強すぎる刺激は痛みを伴うから耐えやすいのよ。 わかるかしら?」


何が悪かったのだろう?

やさしくしたはずなのに。

 まったくわからずに困惑する僕を見てさらにライムは得意げな顔になる。


彼女の唇に夢中になっていた代償として、舌だけでなく体全体の動きが鈍くなった気がする。


「そして、ウィルみたいな熱い人はぁ……こういう責めがたまらなく好きなのよね!!」


ライムは再び距離をつめると、その美しい顔を僕に近づけてきた。




**********************************


ガバッ!!っと僕はベッドから飛び起きた。


全身汗だくだ……しかも久しぶりに夢精。。。してしまったようだ。


これがルルとミリアの先読みの力なのか。


今回はものすごい淫らな夢だったけど、わかったことは2つある。


僕はそのうちスライムバスターになれるということ。


そしてゆく手に立ちふさがるリップス・ライム……彼女にはこのままだと簡単に勝てないようだ。


あともうひとつ、スライムの指輪ってなんだ??


まだまだ僕には知らないことが多すぎる。

気になるなぁ……

僕の頭の中で、ミリアの声が聞こえる。


まだ起きてすぐなので半分寝ている僕の頭に彼女が語りかけているようだ。


『ウィル、どんな未来が見えたかは私たちにはわからないけど、本当の意味であなたが私たちを受け入れたなら……

 バトルの最中でも先読みができるようになるわよ。そうすればあなたの未来は大きく変わる……』


ミリアの声が途切れた。

完全に僕の目がさめた証拠だ。


さっき見た未来は残念ながら僕にとって望ましくないものだった。


ルルたちから引き継いだ力を実戦でも出せるようにならなくては。


僕はまだまだ修行をつまなくてはならない、と固く心に誓ったのだった。

 




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