アベルと一緒に買い物に出かけたは、帰り道に見慣れないものを見かけた。

「わぁ・・・なんだかキレイ。パパ、あれはなぁに?」

紫や赤や黄色・・・色とりどりの細長い紙が木にぶら下がって風に揺れている。

「うん?あれは七夕の飾り物だね。願い事をあの紙に書いて吊るすんだよ。」

「紙に書いて吊るすと願い事が叶うの?」

「そうだよ。やってみるかい?」

「うん!」

二人は七夕飾りのほうへと歩いていった。

「おや、ちゃんと短冊が用意されているぞ・・・はい、これに願い事を書くんだよ」

「こんな小さい紙じゃいっぱい書けないよ、パパ」

「ひとつだけ書くんだよ。欲張っちゃダメだ」

「はぁーい。じゃああたしは『素敵な彼氏とセックス』っと。」

「ずいぶんストレートだね。じゃあ僕は家内安全・・・。」

「危険だもんね、うちのママ」

「そ、そういう意味じゃないんだけどね・・・」

遠くで色気の無いクシャミが聞こえた気がした。


「ふぁ、ふぁ、ぶえっくしょい!!!・・・」


そして帰宅。

「「ただいまー。」」

「お兄さんおかえりなさいっす!」

「いつものことだけど・・・なんであたしを除外するのよ、ロリ年増」

「うっさい!アンタはあたしとお兄さんの仲を引き裂いてデートしてきたじゃん。その罪、万死に値する」

「パパのほうからお誘いがきたんだもん。うらやましいだろ、イーっだ!」

「ムッキャー!! もう許さない、表に出な! 熱烈な教育的指導してやるわ」

「ニャモ!もう少し丁寧な言葉遣いをしなさい。」

「はい、あなた。」

「僕に向かってじゃないよ。娘に対してだ。」

「ううっ・・・だってコイツ生意気なんですよ、お兄さん」

「自分を見ていると思え。そうすれば許せるだろ?」

「そうよ、自業自得よ!」

「ア ン タ が い う な ー!!」

「とにかく・・・・・・もう少し大人になりなさい。それから娘、ママに謝りなさい」

「はぁーい。ごにょごにょ・・・・・・」


「声が小さいぞ、ロリツインテ!おにいさんの言うとおりジャンピング土下座しな!!」

「・・・ごめんねパパ、やっぱり娘は母親と対決する運命みたいよ」

二匹の猫はそのまま外へ飛び出して大喧嘩を始めた。

「やれやれ・・・ナタリエいるかい?」

「はい、なんでしょうアベルさん」

「悪いんだけどあの二人のためにマキロンでも用意しておいてくれないか。」



そして夕食。

「二人ともちゃんと手を洗ったかい?」

「「はぁーい。」」

「じゃあ食べようか。いただきます」

「「 いただきます 」」

戦いが終わっておなかが空いたニャモと娘は猛烈な勢いで皿の上の料理を平らげていく。
鳥のから揚げの山があっという間にアベルの目の前から消えた。


「あ、そうだおにいさん!今日と明日は近所でお祭りがあるらしいっす!!」

「お祭りか。そういえば七夕の季節だもんね」

「なんすか、それ?」

「ニャモも知らないよね、七夕。」

「あたしはパパに教えてもらったけどね〜〜」

「この親不孝者に教えて、大切な妻に教えていないとはなんという虐待」

「じゃああとでお祭りに行こうよ。それでいいだろ?」

「「 うわーい♪ 」」

「私も連れて行ってもらえますか・・・?」

「もちろんだよ、ナタリエは後で浴衣に着替えて。僕が手伝ってあげるから。」

「うれしいです♪」

ポッと頬を赤く染めるナタリエ。

「「 浮気だ! 浮気だ! 浮気だー! 妻と娘の前で浮気だー!! 」」

「二人にも着物はあるよ。赤とピンクのどっちがいい?」

「「 ピンクがいいー!! 」」


こうしてみんな仲良くお祭りへと向かう。
通行人はアベルといっしょに歩いている3人を見て皆振り返る。
タイプは違えどニャモもナタリエも娘も美しかった。

「パパァ、腕組んであるこうよ?」

「おにいさんの腕はあたしんだ!アンタは引っ込んでな!」

「二人は喧嘩したから僕に触っちゃダメ。」

「「 えええ〜〜〜 」」


「じゃあここは私が・・・♪」

しとっ


「ああー! パパがナタおねえちゃんに寝取られてるよ、ママー!」

「おにいさん後悔しますよ。私と娘をジェラシーの渦に巻き込んだことを」


「ナタリエ、その浴衣すごく似合ってる。素敵だ。」

「ありがとう、アベル・・・・・・・・・きゃあっ♪ 呼び捨てにしちゃいました」


「うわあああぁぁぁん! パパのばかぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

「おにいさんのバカァー!! ふえええええええええん!!」

二匹の猫はそれぞれ別の方向へとダッシュしていった。


「・・・少しやりすぎたかな?」

「たまにはいいんじゃないですか?」

「そうだね。たまにはナタリエの相手もしてあげなきゃいけないしね?」

「そ、そういう意味で言ったわけでは・・・・・・」

少し頬を赤く染めて、ナタリエはアベルの反対側を向いて微笑んだ。



それから数分後。
こちらは野良猫純血種。

「うえええぇぇ〜〜、おにいさんひどいよぉ! ナタリエめ、アンタも呪ってやる! お祭りでいい男ゲットしてやるー!!」

「やあカノジョ可愛いね! ひとり?そんなわけないか」

「うっさい!あたしに気安く話しかけんな!草食系男子」

「ひいいいぃぃっ、おっかねえ」

「はぁ・・・都合よくお兄さんよりいい男が転がってるわけ無いか。こうなったらヤケ食いしてやる」

たこ焼き、焼きそば、カキ氷・・・屋台の端から端まで歩き回るニャモ。


「おお、姉ちゃんすげー食いっぷりだな」

「はぐはぐはぐ・・・おじさん、これもうひとつ頂戴!」

「あいよ」

「もぐもぐもぐ・・・悔しいけど美味しいわ、屋台グルメ。んんっ、あれは娘っ!?」

「へいおまち!」

「おじさんありがとっ」


屋台から少し離れたところで一人線香花火をしているのは野良猫ハイブリッド。

「パパひどいよぉ〜」

淫魔は人間と比べて体の成長は早い。
しかし心の成長に関しては人間と同じ。
本気でないとわかっていても、さっきのナタリエやニャモに対する嫉妬の気持ちは抑えきれない。

「あたしのこと嫌いになったわけじゃないよね、パパァ・・・」

「あの・・・」

一人悩む娘に、生真面目そうな青年が話しかけてきた。


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