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もうすぐ年の瀬。
アベルはいつもと同じように夕飯を作っている。

「お兄さん、大晦日ですよ!」
「大晦日は明日だよ、ニャモ」
「おなかすいたよ、パパぁ♪」
「もうちょっと待っててね」
「はぁい」
「何でそいつには優しいんですか、お兄さん。セクハラですよ」
「僕のやさしさは優先順位があるんだ」
「もちろん一番はあたしですよね」
「残念ながらそれはない」

もちろん娘の前での照れ隠しだが、そんなものが通じる相手ではない。

「ところで大晦日ってエッチしちゃいけないって本当ですか」
「誰が言ってたんだい?」
「うちの馬鹿娘が」
「そうだね、エッチしないでしっとりと過ごすのもいいね」
「父娘水入らずで過ごそうね、パパ」
「なんでそこにあたしが入ってないんだ。おい、表に出ろ娘」
「二人とも仲良くしなさい」
「うぐっ、お兄さんに言われると何もいえない」
「そうよ、言うとおりにしなさい。年増はエッチなしよ」
「ムキャー!! やっぱりあんたとは仲良くできそうもないわ。お兄さんから離れたまえ」
「僕と娘を引き離さないでくれ。やっと会えたんだから」
「パパァ〜♪」
「そう来たか!それでいいのか! 奥の手を見せてやる! うえええええええ〜〜〜ん」
ドタタタタタタタタ
「あ、逃げた」


月明かりの中、ニャモは近くの公園でうずくまっていた。
「うー、さむいよ。お兄さんあんまりだよ。おなかもすいてるんだよ」
「よー、ねーちゃん。寒そうだな」
「あっちいけオヤジ。あたしは心が寒いんだ」
「まあそういうなよ。お互いに派遣切りされた仲ということで」
「あたしは派遣淫魔じゃないっ。もう話しかけるなぁ!!」

「あ、こんなところにいたのか」
「お兄さん!」
「さあ帰ろう。お騒がせしました」
「挨拶なんかいいよ、さあ帰ろう」
「勝手に出て行ったのはニャモだろ」
「うぐっ、やむをえない事情がありまして」

二人はしばらく月明かりの中を歩いた。

「ねえ、お兄さん」
「なんだい?」
「あたしと娘、どっちが好き?」
「人間の夫婦同士ではありえない質問だな」
「異種交流ということで大目に見てくださいよ」
「僕はニャモが好きだよ」
「娘にも同じように言うのでしょ。鬼のような旦那様を持つと苦労します」
「ニャモがいなければあの娘もいないわけだし」
「そーです、そーなんです! そこは大事です。やっとわかってくれましたか、お兄さん」
「でもあの子も生まれてからずっと寂しかったわけだし」
「それは置いといて。私も寂しかったですから」
「僕だって寂しかったんだよ?」
「またまたお兄さん、そうやって誤魔化そうとしてもだめですよ」
「ごまかさないよ」
「ふえっ、ちょ、ちょっと! いきなりですかぁ」

アベルはニャモを後ろから優しく抱きしめた。

「淫魔の隙を突くなんて、お兄さんなかなかやりますね」
「君はいつも隙だらけだからな」
「あうっ……それだけは言って欲しくなかった」
「ほら、弱いところを守らないと」
「ひゃうっ、乳首をひねるの反則です」
「キミの感じやすさも反則だろ」
「これはわざと感じてる振りで……はひゅっ、相手を油断させるのが目的なのです」
「僕が油断しているとでも?」
「はい、私の勝利は目前です。ひいっ! ふにゃあ!! ダメダメダメ!!」

アベルはニャモの胸を責め続ける。
時折無防備な下半身を撫で回すと、ニャモはビクビクと反応した。


しかし……

「今夜はがんばるね」
「ふ、ふぁい」
「いつもならすでに4回くらいイっちゃってるのに、なぜだろう?」
「そろそろ私に主導権を譲りなさい、お兄さん」
「もうこんなに濡れてるし、いつもどおり感度は良いし」
「ふみゅみゅみゃみゃみゃあぁぁ! クリを激しくこねまわすのは禁止です。レッドカードォ!!」
「じゃあもうやめようか」
「なんという寸止め。あなた鬼ですか」
「けっこう本気なんだけどなぁ」

「お兄さん、今夜は満月ですから」
「だからなんだい?」
「月夜の晩は淫魔がパワーアップするのですよ!」
「パワーアップしてこの程度か」
「にゃんですと! とうとう私を本気にさせてしまいましたね」
「早く本気の力を見せてくれ」
「お望みとあらば。ふふっ、後悔しますよ」

くるっと身を翻してアベルに襲い掛かるニャモ。
彼もしばらくは身を任せていたが、飽きてきた。

「そろそろ君の時間は終わりだ」
「えっ、うそ。さてはこの期に及んで効いてない振りですか、お兄さん」
「いや、本当で効いてない」
「この照れ屋さんめ。無理しなくても良いんですよ」
「がんばったご褒美はあげないとね」

むにゅっ。

「はっ、いつの間にかバックを取られてる。なんですかこの敗北直前ムードわ」

アベルはニャモのやわらかいお尻を鷲づかみして、ペニスを挿入する。

ずんずんずんずんずんずんずんずんずんずんずんずんずんずんずんずんずんずんずんずんずんずんずんずんずんずんずんずんずんずんずんずんずんずんずんずんずんずんずんずんずんずんずんずんずん


「んひぃああああああああああああ――――――――ッ!!!!!!!」


闇夜に野良猫の悲鳴が響き渡った。







「「ただいまー」」

「やっとかえってきたな。家出夫婦」
「家出したのはニャモだよ」
「そうだったよね、パパぁ♪」
「あたしのお兄さんから離れな、小娘」
「何も変わってないじゃん。少しは心を入れ替えてきなさいよ」
「あなた、お風呂にする、それともあたし?」
「それよりもご飯にしようよ。今夜はおでんだよ」
「「わーい」」

食事とお風呂が終わり、3人で布団の中に入る。
なぜか娘は早く寝た。

「今年ももうすぐ終わりだね」
「どうしたんですか、お兄さん。急にあたしが恋しくなったとですか」
「いや、それはない」
「ムッキャー! 呪ってやる。夢の中に出てやる」

「もう勝手に出て行くんじゃないぞ、ニャモ」
「はいあなた……って、抱きしめてくれないのかYO!」
「じゃあたまには抱きしめてみるか」
「……そのぬくもりは犯罪です」
「とにかく娘にやきもち焼くな」
「それは出来ない相談です」


二人の会話は長く続いた。
薄目を開けながら娘はその会話をずっと聞いていた。

(この二人、やっぱりいいなぁ。来年は私もパパよりかっこいい男の人を絶対見つけてやるんだから)


来年も3人にとって幸せな年でありますように。


了。


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