パンチの軌道をそらされ、加藤の重心が少しぶれた。
肉体的な打撃よりも、軽く繰り出した奈緒のアッパーに自分の拳がはじかれたことがショックだった。
その間にも流れるような動作で奈緒は加藤に迫っていた!
「ほらボディいくよぉ」
「ちっ、うぶぉっ!!」
懐に入られた加藤が気を取り直して迎撃の右フック・・・を打つ前に奈緒の左右連打が加藤の胸と腹を打った。
パンッ、パパパパパン!!
軽くけん制の左が加藤の頬を打ったと思ったら、胸、腹、左肩にショットガンのようなパンチが襲い掛かってきた。
「うおっ、くそっ!!」
倒れるほどの痛みはないが、動きが一瞬止まる。
敵のペースを振り切るため振り回した加藤の右が空を切る。
「遅い遅い、ふふっ」
奈緒はすでに射程の外でステップを踏んでいた。
「まずは1ポイントだね」
「お、お前のパンチなんか効かねえ!!」
「あっそう・・・」
再び奈緒が射程距離に踏み込んできた。
(今度こそははずさない!)
加藤は左のフェイントを入れてから右ストレートを放った。
ズムッ・・・
加藤の右腕の内側に奈緒の顔があった。
彼の右わき腹にレバーを下からえぐるようなパンチが突き刺さっていた!
「〜〜〜〜〜っ」
声にならないうめきをこらえる加藤。
その無防備な腹筋を打ち抜くように奈緒の容赦ないパンチが襲い掛かる。
ドン、ドドッ、ドムッ
まるで地面に杭を打ち付けるかのような鈍い音がした。
マウスピースを思わず落としてしまいそうになる加藤・・・
女性の小さな拳で肝臓を打ち抜かれた加藤はほんの1秒ほどだが呼吸を止められてしまった。
その刹那に先ほどのようなショットガンパンチではなく体重を乗せたパンチを奈緒は打ち込んだのだ。
「じっくり動けなくしてあげる・・・っ!!」
ずんっ
すい臓、心臓、胃の付近・・・硬い筋肉に覆われているとはいえ、急所に変わりない臓器の真上を丁寧に叩く。
ただでさえ乱れていた呼吸を立て直すこともできず、加藤は悶絶した。
「おぶっ、あっ、あっ・・・ふぐぅ」
「まだまだ倒れるには早いわ・・・よっ!!」
ビキュッ!
加藤がたまらずあごを下げたところへ奈緒の鋭いアッパーカット。
(かはっ・・・)
神経を切断されたかのようにキンキンという耳鳴りが加藤の頭の中にする。
途切れそうになる意識を必死でつなぎとめる。
「ふふっ、またガラ空きになったね?」
その言葉に加藤はハッとする・・・が身動きが取れない。
九の字に折れそうな加藤の顔を跳ね上げてから、再び奈緒は彼のボディ打ちに専念した。
パンパンパンパン、パパパパン!!
サンドバッグというよりは分厚い布団を叩くようにパンチを重ねる。
彼にクリンチするような体勢でショートパンチを繰り返す。
「ほらほら、女のパンチなんて効かないんじゃなかったのぉ?」
加藤が言ったように女性の拳は軽い。
だがこれほどまでに回数を重ねられれば男とはいえ耐え切れるものではない。
「ぐ・・・ああぁぁ・・・!!!」
ブンブンブンッ
空を切る豪腕。
加藤の目に光が戻り、反撃の拳がやってくる気配を感じると奈緒は射程外に身をおいた。
そして加藤の呼吸が乱れるのを見計らって再び懐に入り込む。
「蝶のように舞い、蜂のように刺す」
観客はみな昔の偉大なボクサーの言葉を思い出さざるを得なかった。
カーン!
第2ラウンド終了のゴングがなるまで奈緒は加藤のボディを打ち続けた。
小さく、細かく、鋭く重ねたパンチは加藤のスタミナをごっそりと奪ったに違いない。
「おっ、うぐぅ・・・」
「あはっ、今度は少し効いたかな?」
離れ際に奈緒はにっこりしながら彼の顔色を覗き込む。ダメージはどうやら深刻のようだ。
「次のラウンドも可愛がってあげるわ」
彼に背中を向けて悠然とコーナーへ戻る奈緒。
ゴングの間際まで奈緒に密着されていた加藤は支えを失ってフラフラとした足取りでコーナーへ戻る。
奈緒に滅多打ちにされた加藤陣営は蜂の巣を突いたようになっていた。
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